研究課題/領域番号 |
20K09696
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
小川 洋 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70264554)
|
研究分担者 |
錫谷 達夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40196895)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 加齢性難聴予防 / 老人性難聴予防 / 乳酸菌による難聴予防 |
研究実績の概要 |
本研究はマウス動物実験系を用いて、聴覚障害に対する機能性食品の効能や、腸内細菌叢との関係を解析するものである。この二年間で4種類の乳酸菌がマウスにおける加齢性難聴の発症を予防するかを検討した。使用した乳酸菌は以下の4種類である。①Lactococcus lactis 1119B1(B1)、②Lactobacillus acidophilus(acid)、③Lactobacillus delbrueckii bulgaricus(bul)、④Bifidobacterium lactis(bifid)。雌性C57BL/6Jマウスを24週齢から48週齢まで飼育し、経時的に聴性脳幹反応を測定することで可聴閾値の変化を解析した。48週齢における対照群の可聴閾値と比較して、8kHzおよび16kHzではすべての乳酸菌で可聴閾値の上昇を抑制していた。また、24kHzでは特にacid群で可聴閾値の上昇が軽減しており、B1群でも軽減効果がみられた。さらにフローサイトメトリーを用いた免疫老化の解析を行った。脾臓およびパイエル板のCD4またはCD8陽性T細胞においてナイーブT細胞(CD44 low、CD62L high)、セントラルメモリーT細胞(CD44 high、CD62L high)、エフェクター/エフェクターメモリーT細胞(CD44 high、CD62L low)が占める割合を比較した。その結果、24週齢と比較し48週齢ではCD4、CD8陽性T細胞ともにナイーブT細胞の減少、エフェクター/エフェクターメモリーT細胞の増加がみられたが、acid群においてはその変動の軽減がみられた。bifid群ではCD8陽性T細胞でのみ軽減効果がみられた。以上の結果から、Lactobacillus acidophilusは免疫老化を軽減することで加齢性難聴の発症および進行を遅らせることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4種類の乳酸菌の投与により、継時的にABRを測定することで聴力低下の抑制効果があるかどうかを計測することができた。フローサイトメトリーを用いた免疫老化の解析では、脾臓およびパイエル板のCD4またはCD8陽性T細胞においてナイーブT細胞(CD44 low、CD62L high)、セントラルメモリーT細胞(CD44 high、CD62L high)、エフェクター/エフェクターメモリーT細胞(CD44 high、CD62L low)no 占める割合を比較することができた。24週齢と比較し48週齢ではCD4、CD8陽性T細胞ともにナイーブT細胞の減少、エフェクター/エフェクターメモリーT細胞の増加がみられたが、acid群においてはその変動の軽減がみられた。bifid群ではCD8陽性T細胞でのみ軽減効果がみられた。以上の結果から、Lactobacillus acidophilusは免疫老化を軽減することで老人性難聴の発生および進行を遅らせることが示唆された。しかしながら、まだ蝸牛ラセン神経節への影響の解析や、乳酸菌投与例での腸内細菌叢解析が進んでいないため当初の実験計画からやや遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)次世代シークエンサーを用いて、24および48週齢時点での糞便から腸内細菌叢の解析を行う。2)HE染色および免疫組織化学染色を用いて蝸牛のらせん神経節への影響を明らかにする。3)Luminexを用いて血中サイトカインへの影響を解析する。 上記の検討を行い、より詳細に作用機序を明らかにしていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響でLactococcus lactisの入手の遅れが生じたこと、実験に関わる人材が新型コロナ感染症対策に関わる必要があったことなどから実験計画が全体的に遅れてしまい、今年度中に当初の計画に追いつくことができなかった。昨年度に施行できなかった動物モデルの作成および解析を本年も引き続き継続するため、昨年度の助成金を翌年度分として請求した助成金とあわせて使用する。
|