研究実績の概要 |
厚生労働省の指定難病の診断基準により診断される好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis, ECRS)の治療は、薬物治療(副腎皮質ステロイドホルモン薬、以下、ステロイドと生物学的製剤dupilumab)と手術(endoscopic sinus surgery, ESS)を適宜組み合わせて行う。臨床研究として、ECRSの手術症例を対象として術後治療成績の向上を目的とした検討を行った。ECRS術後に鼻腔局所ステロイド治療の必要性と有効性について、実施群(n = 15)と非実施群(n = 15)を比較検討した。評価項目には、我々が提唱したスコアリングシステムを用いた。鼻症状アンケート(nasal symptoms questionnaire, NSQ; Saito T, Tsuzuki K, et al: ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec, 2018)と術後内視鏡スコア(postoperative endoscopic appearance score, PEAS, Eスコア; Tsuzuki K, et al, Auris Nasus Larynx, 2014)のスコアの変化を統計学的に解析した。ECRS症例の術後は、術前と比較して有意にNSQスコアが改善して、手術治療の有効性が確認された。若年成人、術前からの重症な副鼻腔炎、術後の嗅覚低下は、術後に再発しやすい傾向を認めたため、鼻腔局所ステロイド治療の必要性が高まったと考えられた。実施群では鼻症状が有意に改善し、重篤な副反応も生じなく、有効な術後治療法の一つであることが考えられた。本研究の成果は英文雑誌に受理された。基礎研究は、2021年度から遂行する環境を整えて、開始する予定である。
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