研究実績の概要 |
臨床研究として、好酸球性副鼻腔炎の治療の有効性を確認した。本研究は、嗅覚障害の原因に最も多い鼻副鼻腔疾患の中で、特に指定難病である好酸球性副鼻腔炎に焦点を当てている。内視鏡下副鼻腔手術治療により、嗅覚障害は有意に改善することを再確認した。副腎皮質ステロイドおよび生物学的製剤の有効性についても検証している。治療成績に関して、我々の考案したスコアリングシステムが治療方針の決定にどのように影響するか調査している。鼻症状アンケート(NSQ, nasal symptoms questionaire)を用いた検討では、術前の薬物治療に反応性があれば術後嗅覚の予後良好群であることが示唆された。また術後内視鏡スコア(PEAS, postoperative endoscopic appearance socere)を用いた検討では、鼻内所見によって治療方針を決定できる可能性が示唆された。最終年度では、これらの臨床研究の成果を学術論文にまとめる。 基礎研究として、好酸球性副鼻腔炎の病態におけるメントールの役割について分析を進めている。メントールがTRPM8を介して肥満細胞を活性化しアレルギー応答を引き起こすメカニズムを解析するため、肥満細胞の培養系でメントール受容体TRPM8の発現を観察中である。さらに好酸球性副鼻腔炎の病態に関与しうる種々の免疫系細胞や上皮系および間質系の細胞に対するメントールの効果を評価していく。実験方法は、種々の細胞に対しionophoreおよびメントールを投与し、ELISA法を用いてIgE産生量を測定する。また、PCR法を用いてIL-25,IL-33など好酸球性炎症に関与するサイトカインの遺伝子発現について解析する。
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