本年度も引き続き頭頸部がん免疫療法の効果をより増強させるため、パクリタキセルの免疫修飾作用に注目し、局所の抗腫瘍免疫に影響する因子の解析を進めた。 今年度はまず頭頸部扁平上皮癌細胞株SAS細胞を用いてQuantSeq 3’mRNA-seqにてパクリタキセル刺激で変化する遺伝子プロファイルを同定した。低用量Paclitaxelで48時間刺激後にtotal RNAを抽出し刺激前後で変化している遺伝子を同定したところ、Control群に比べて低用量Paclitaxel刺激で発現上昇した遺伝子は468種類、発現低下した遺伝子は658種類同定できた。 このプロファイル変化からimmunogenic cell deathに関与するパスウェイを解析したところ低用量Paclitaxel刺激によりIL-1サイトカインファミリーの上昇が確認でき、酸化的リン酸化経路によるATP産生に関連する遺伝子が増加していた。さらにATPを細胞外へ放出するチャネルをコードするPANX1遺伝子も有意に変化していた。さらにパクリタキセル刺激はROSを介したミトコンドリアDNA損傷によるを誘導することがわかっているが、細胞内からROSを除去する酵素であるSOD2遺伝子発現を低下させることも明らかにできた。 続いて低用量Paclitaxelで48時間刺激したSAS細胞のメタボローム解析ではTCA回路に関する1次代謝産物が増加しており、前述した酸化的リン酸化を回すために必要な代謝経路が活性化していることがわかった。 以上からPaclitaxel刺激により頭頸部癌細胞ではATPをより多く産生・放出する酸化的リン酸化経路できることわかり、低用量パクリタキセルがimmunogenic cell deathを効率よく誘導できるATP産生を頭頸部癌に誘導できるエビデンスを示すことができた。
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