研究課題/領域番号 |
20K09707
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
西尾 信哉 信州大学, 医学部, 特任講師 (70467166)
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研究分担者 |
宇佐美 真一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10184996)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 内耳 / 遺伝子発現 / RNA-Seq |
研究実績の概要 |
先天性難聴は新生児1,000人に1人に認められる比較的頻度の高い疾患である。しかしながら、ヒト内耳は骨に囲まれた組織であり生検が不可能であり、得られる検体の多くがホルマリン固定標本でありRNAの解析は困難であるため、詳細な遺伝子発現に関しては、ほとんど明らかになっていない状態である。そこで、本研究では、ヒト内耳における遺伝子発現パターンを明らかにするとともに、有毛細胞や血管条などに特異的に発現する遺伝子に関して、難聴患者を対象にした新規原因候補遺伝子のスクリーニングを行い、聴覚の機能維持および難聴発症のメカニズムを解明することを目的とした。 本年度は、共同研究施設であるインスブルック大学のAnneliese Schrott-Fischer教授と、本共同研究に関しても十分な打ち合わせを行なうとともに、ヒト蝸牛サンプルの送付および受領を行った。具体的には、インスブルック大学にてヒト内耳サンプルを摘出後、RNA-Laterに入れ、凍結状態を保ったまま国内に輸送し、信州大学でRNA抽出、ライブラリ作成、RNA-Seq解析を実施した。その結果、蝸牛全体の遺伝子発現プロファイルを得ることができた。興味深い点としてGW14、15、16と遺伝子発現が変化する遺伝子を複数見出した。また、マウス内耳との遺伝子発現比較解析を行った結果、全体としては類似の遺伝子発現変化が見られることを明らかにした。現在、より詳細な部位ごとの遺伝子発現解析を行うための予備的検討を行っており、次年度以降にコルチ器、外側壁、内ラセン隆起など部位別の遺伝子発現解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、インスブルック大学よりヒト蝸牛サンプルを入手し、RNA抽出、RNA-Seq解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られたデータの詳細な分析を行い、蝸牛全体の遺伝子発現プロファイル(転写産物の種類と量)を明らかにするとともに、過去に得られているマウス内耳のRNA-Seqデータを用いた発現比較解析を進める。また、より詳細な部位ごとの遺伝子発現解析を行うため、コルチ器、外側壁、内ラセン隆起など部位別の遺伝子発現解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響によりオーストリアのロックダウン期間が生じ、インスブルック大学からのサンプル到着が当初予定より遅れたために残額が生じた。その後、サンプルは入手できたため、次年度以降に当初の計画通りRNA-Seq試薬等を購入し遺伝子発現解析をさらに進めることが可能である。
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