研究課題/領域番号 |
20K09709
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研究機関 | 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部 |
研究代表者 |
山崎 博司 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 医長 (80536243)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工内耳 / 脳波 / 聴覚野 / 光トポグラフィー |
研究実績の概要 |
後述の様に、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大のためにシールドルーム内での脳波検査が施行できず、再開できるかも不透明であったため、代替案として換気が保たれた部屋で人工内耳装用者にも施行可能な検査として、光トポグラフィーを用いた検査を施行する方針とした。 人工内耳装用者を対象とした視聴覚刺激の前実験として、音声刺激とパルス刺激それぞれを提示し、光トポグラフィーを用いて左右の聴覚野どのような血流変化が励起されるかを検討した。本研究では、3才未満で人工内耳手術を受けた先天性難聴児のうち、人工内耳を用いた音声言語理解が良好な5名を対象とした。パルス刺激では人工内耳のCレベルに相当する電流を2Hzで5秒間提示するタスクを10回以上行い、音声刺激では約15秒間の子供用のニュース音声を8回提示し、その際の推定ヘモグロビン濃度変化を加算平均した。いずれの検査でも推定ヘモグロビン濃度が刺激提示開始から5秒以内に上昇が観察され、刺激開始15秒以内にピーク値を示した。ピーク値の振幅に注目すると、パルス刺激では人工内耳刺激と対側の聴覚野でより大きな血流変化が観察され対側優位性が観察されたのに対し、音声刺激では左半球優位の脳血流の増加が観察された。パルス刺激は聴覚神経回路の解剖学的な対側優位性を反映し、音声刺激では言語理解の左半球優位性を反映していると考えられた。この光トポグラフィーを用いた検査結果は過去の脳波検査結果と類似しており、脳波検査の代わりに光トポグラフィーを用いることが可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、新型コロナウイルス感染症拡大のために、シールドルーム(閉鎖空間)内で長時間検査を施行するために患者をリクルートすること自体が感染防御の観点から困難であった。また、当院内に研究用の脳波検査室を増設する予定であったが、当院が新型コロナウイルス感染症患者の主たる受け入れ病院となったためにコロナ関連の業務が最優先となり、工事が遅延した。最終的に2021年4月に脳波検査室が完成したが、脳波検査を用いた研究の開始が大幅に遅延した。2021年5月時点でも兵庫県では緊急事態宣言が発出されており、今後、シールドルーム内での検査が再開できるか不透明であるため、代替策として光トポグラフィーを用いて聴覚刺激単独と、視聴覚刺激時で脳血流の変化にどのような違いが生じるかを検討する方針とした。前実験として音声刺激を用いた研究を行い、一定の成果を得られたが、視聴覚刺激を用いた研究が開始できていないため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、日本国内で新型コロナウイルス感染症が落ち着き、シールドルーム内での脳波検査が可能となれば、予定通り脳波検査を用いて視聴覚統合タスク時の脳機能評価を行い、視聴覚統合率とCz-Ozコヒーレンスの強さの関連を検討する。先天性難聴を持つ人工内耳装用者のうち3歳未満で手術を行った群と、3歳以上で手術を行った群の15歳以上の装用者を各8~10名を研究対象とし、視聴覚統合の検査を行い、視聴覚統合の頻度と聴覚刺激提示前のCz-Ozコヒーレンスの強さを評価する。一方、引き続きールドルーム内での脳波検査を控える必要があれば、光トポグラフィーを用いた研究を継続する。研究対象者は上記と同じであるが、音声刺激単独と、音声だけでなく口唇の動きを同時に提示する視聴覚刺激を用いた際に、聴覚野の反応の大きさと左右差がどのように変化するか光トポグラフィーを用いて検討する。行動学的には3歳以上で手術を行った群は資格に依存した言語理解となる傾向があるため、資格を併用した方が聴覚野の反応が大きくなると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のために、脳波検査室増設が遅延したため、当初予定していた脳波研究を開始することができなかった。そのため、脳波関連の一部の物品の購入が2021年度にずれ込んだため。
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