研究実績の概要 |
当院における鼻副鼻腔悪性腫瘍データベースの137例中、鼻副鼻腔神経内分泌悪性腫瘍の60例を抽出し、主たる組織型である嗅神経芽細胞腫(ONB)において利用可能な組織検体を有する症例に絞り込みを行った。その結果、本研究の中心である腫瘍の体細胞遺伝子変異の程度と免疫多重染色による腫瘍内及び腫瘍周囲免疫細胞の関係を検討する上で十分な腫瘍組織が確保できたのは全29例中28例であった。本研究に十分利用可能な組織検体は、ONB 29例中28例で、組織型及び悪性度分類の再レビューを行った。次世代シーケンサー(NGS)を用いた遺伝子変異解析と免疫多重染色は、研究協力者の近畿大学医学部ゲノム生物学教室及びがん研究会有明病院先端医療センターと検討を重ねた。 NGSに関しては、解析困難例が10例あり、18例において解析を終了した。エピジェネティクスに関連するバリアントを認めた。腫瘍遺伝子変異量(Tumor mutational burden: TMB)については、いわゆるTMB High (≧10 mutations/Mgb)を2例(11%)に認めた。 腫瘍免疫微小環境解析のために免疫多重染色の調整を行った。ONBは抗synaptophysin抗体で腫瘍細胞を標識可能であることを見出せたため、免疫パネル(CD3, CD4, CD8,CD 20, PD-L1, Foxp3, CD204, Synaptophysin, DAPI)を作成し、28例において染色を進めることができた。免疫多重染色による免疫細胞の密度解析を行うためのマーキング作業を当院病理部及び研究協力施設を含めたミーティングを複数回に亘り詳細に行い、長時間を要したが解析方針を決定できた。近日中に解析終了予定であり、ONBにおいてがん免疫療法による介入が期待できるかどうかに関して探索的な結果が得られると考えている。
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