研究実績の概要 |
2023年度末までに、これまでに検討済みであった1年齢に加えて6ヵ月齢マウスの聴力を聴性脳幹反応で検討した。雄C57BL6Jマウスは6ヵ月齢ですでに加齢性難聴を呈しており、その程度は1年齢マウスとほぼ同等である。このことより1年齢マウスの蝸牛の加齢性変化は一定以上進行した状態であると言える。次にリアルタイムRT-PCRを用いて免疫関連遺伝子Casp1, IL18r1, IL18rap, IL1B, Card9, Clec4e, Ifit1, Ifit3, Tlr9の発現をそれぞれ若年マウス、3ヵ月齢、6ヵ月齢、9ヵ月齢、12ヵ月齢で検討した。これらの内6ヵ月齢までに有意な発現増加を示した遺伝子にはIfit3(3ヵ月齢で増加), IL1B(3ヵ月齢で増加), IL18rap(6ヵ月齢で増加)があった。これらの3遺伝子は加齢性難聴の発症自体に関係する可能性があり、今後その機能を研究することにより、加齢性難聴の原因となるメカニズムが明らかになるかもしれない。一方Ifit3とIL18rap以外の遺伝子はすべて、9ヵ月齢と12ヵ月齢の間に急激な上昇をしめしていた。聴力等から推察すると9ヵ月齢から12ヵ月齢のマウス蝸牛の加齢プロセスは進行した状態と考えられ、これらの免疫応答はむしろ加齢性変性の結果としてもたらされたものと推測される。また、マウス蝸牛でのマクロファージの局在を特異的マーカー(Iba1)の免疫染色で検討したところでは、1年齢の蝸牛においてマクロファージは外側壁(らせん靭帯・血管状)に存在していた。IL-18 receptor 1やIL-1betaの発現はコルチ器にも認められるので、これらの炎症・免疫反応は多彩な分子メカニズムを介すると考えられる。
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