研究課題
舌下免疫療法はアレルゲンに対する免疫寛容を誘導する、アレルギー性鼻炎の根治的治療法である。薬物療法では得られない本療法の特長として治療終了後にも効果が持続する効果、すなわち免疫寛容の安定化(Stability)が挙げられる。本療法は有効な治療法であるが、その効果には個人差が大きい。また根治的な効果を期待するのであれば複数年にわたる治療が必要とされる。すなわち、時間と労力および費用を要する治療法である。従って、本療法によって誘導される免疫寛容が安定化したことを反映しうるバイオマーカーの確立や、免疫寛容の安定化を誘導するアジュバントの開発は喫緊の課題であるが、検討は十分に進んでいない。免疫寛容に中心的に働く制御性T細胞の分化と機能に必須の役割を担っているマスター転写分子がFoxp3である。Foxp3の安定的な発現はCNS2領域のDNAの脱メチル化によって誘導される。すなわち、脱メチル化が進めばCNS2領域にNFATやRunx1などの転写因子が結合し、Foxp3発現を促進することで、制御性T細胞の発現および機能が安定化すると考えられている。2015年以降、CNS2領域の脱メチル化、さらには制御性T細胞の安定性にTET(ten-eleven translocation)ファミリー分子(TET1、TET2、TET3)が中心的に関与する報告が相次いでなされている。今回の研究では、舌下免疫療法によるTETファミリー分子の発現誘導とその臨床的意義を検討している。本年度は、アレルギー性鼻炎患者における制御性T細胞のTETファミリー分子発現を観察することを目的に、制御性T細胞(CD25+CD4+CD127dim/-細胞)の分離や、本細胞のTET1,TET2、TET3のmRNA発現量をリアルタイムPCRにて測定した。
3: やや遅れている
研究プロジェクトの作成はどは予定通り進んでいるが、コロナ禍が直撃し、患者のリクルート、サンプルの収集がやや遅れている。
患者のリクルートについては、舌下免疫療法を積極的に行っている医療機関との共同研究を進めるように交渉を行っている。特に日本有数の舌下免疫療法施行実績のあるゆたクリニックと新たな共同研究を進める予定を立てており、既に打ち合わせを終えている。共同研究を進めることにより、研究が推進することが見込まれる。
コロナ禍で患者のリクルートに支障を生じたため次年度使用額が生じた。患者のリクルートについては、舌下免疫療法を積極的に行っている医療機関との共同研究を進めるように交渉を行っている。共同研究を進めることにより、次年度は当初計画していた予算以上の経費が必要となることからこれを活用したい。
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Allergy
巻: 不明 ページ: 不明
10.1111/all.14858
Clinical Immunology
巻: 210 ページ: 108310
Journal of Allergy and Clinical Immunology in Practice
巻: 8 ページ: 3130-3140