研究課題
舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎の根治的治療法であり、アレルゲンに対する免疫寛容の誘導と維持を目的とする。免疫寛容に中心的に働く制御性T細胞の安定性(stability)にTET (ten-eleven translocation) ファミリー分子によるエピゲノム修飾が強く関与する。本年度は、舌下免疫療法によるTETファミリー分子の発現誘導とその臨床的意義を検討した。対象は舌下免疫療法を施行したスギ花粉症患者 (n=16)である。舌下免疫療法前および施行1シーズン後(スギ花粉飛散後)に採血を行い、末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、さらに磁気ビーズ法により制御性T細胞(CD25+CD4+CD127dim/-細胞)を分離した。本細胞のTET1,TET2、TET3のmRNA発現量をリアルタイムPCRにて測定した。PBMCはCry j 1(スギ花粉主要抗原)刺激にて72時間培養した。細胞を回収しTET1,TET2、TET3のmRNA発現量をリアルタイムPCRにて測定した。さらに細胞上清も回収し、上清中のIL-10、IL-5、IL-13、IFN-γ濃度をELISAにて測定した。舌下免疫療法によって、PBMCを構成する制御性T細胞上のTET1,TET2、TET3のmRNA発現量には有意な変動を認めなかった。舌下免疫療法施行前、施行後ともにCry j 1刺激によるPBMCのTET1,TET2、TET3のmRNA発現量も有意な変化を認めなかったが、舌下免疫療法施行後のPBMCについてはCry j 1刺激によりTET1 mRNA発現が増加する例を認めた。上清中のサイトカインについては舌下免疫療法施行によりIL-5およびIL-13の有意な低下を示した。一方、IL-5およびIL-13の産生変化量とCry j 1刺激によるPBMCのTET1,TET2、TET3のmRNA発現の変化量との間には有意な相関を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍で患者リクルートが難しかったが、何とか16例の患者をリクルートできた。
症例数を増やすとともに、TET発現変動の臨床的意義について解析を進める。R5年の住花粉飛散期後より舌下免疫療法施行患者より採血を行っており、全部で30例程度の症例の確保を目指している。またTET発現変動の臨床的意義については、スギ・ヒノキ花粉飛散期の症状スコアやQOLスコアを収集している。舌下免疫療法前の症状スコアやQOLスコアと比較して舌下免疫療法後の症状スコアやQOLスコアの低下が50%以上であった群を有効群、50%未満であった症例を非有効群とする。有効群と非有効群との間でTET発現変動に有意な差があるのか検討する。
症例数を増やすことと、臨床症候との関連を検討するため
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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