舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎の根治的治療法であり、アレルゲンに対する免疫寛容の誘導と維持を目的とする。免疫寛容に中心的に働く制御性T細胞の安定性(stability)にTET (ten-eleven translocation) ファミリー分子によるエピゲノム修飾が強く関与する。本年度は、舌下免疫療法によるTETファミリー分子の発現誘導とその臨床的意義を検討した。対象は舌下免疫療法を施行したスギ花粉症患者 (n=20)である。舌下免疫療法前および施行1シーズン後(スギ花粉飛散後)に採血を行い、末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、さらに磁気ビーズ法により制御性T細胞(CD25+CD4+CD127dim/-細胞)を分離した。本細胞のTET1, TET2、TET3のmRNA発現量をリアルタイムPCRにて測定した。PBMCはCry j 1(スギ花粉主要抗原)刺激にて72時間培養した。細胞を回収しTET1,TET2、TET3のmRNA発現量をリアルタイムPCRにて測定した。さらに細胞上清も回収し、上清中のIL-10、IL-5、IL-13、IFN-γ濃度をELISAにて測定した。舌下免疫療法によって、PBMCを構成する制御性T細胞上のTET1,TET2、TET3のmRNA発現量には有意な変動を認めなかった。舌下免疫療法施行前、施行後ともにCry j 1刺激によるPBMCのTET1,TET2、TET3のmRNA発現量も有意な変化を認めなかった。上清中のサイトカインについては舌下免疫療法施行によりIL-5およびIL-13の有意な低下を示した。一方、IL-5およびIL-13の産生変化量とCry j 1刺激によるPBMCのTET1,TET2、TET3のmRNA発現の変化量との間には有意な相関を認めなかった。
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