現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NVP固定6献体(男性, n=3; 女性, n=3)と、ホルマリン固定4献体(男性, n=3; 女性, n=1)からの摘出喉頭を吹鳴実験に用いた。気管側から声門への送気量は、男性12 L/min、女性8.0 L/minとした。HSDI画像から作成したキモグラムで声帯の振動様式を検討し、声門開大時(max)と閉鎖時(min)の声帯位置をもとに、声帯膜様部長(MVFL)で標準化した声帯振動の振幅(NA=(min-max)/MVFL)を測定した。さらに、CV条件(CVL)とFV条件(FVL)での声帯膜様部長をもとに、声帯の伸張率((FVL-CVL)/CVL)を計測した。各実験において記録された喉頭原音の音響分析を行い、F0を測定した。初回検討後、NVP固定cadaver摘出喉頭のひとつを5%のNVP液に保存し、6ヶ月後に吹鳴実験を行った。 ホルマリン固定cadaverでは、声帯の振動や伸張、音声産生を認めなかったため、NVP固定cadaverでの結果を示す。画像解析の結果、実験系の声帯は、生体同様に、下唇側から上唇側へ順に外方移動して声門が開大し、続けて下唇側から上唇側へ順に内方移動して声門が閉鎖する三次元的な振動を繰り返すことがわかった。さらに、CV条件とFV条件の声帯振動様式は、それぞれ生体の胸声発声と裏声発声の振動様式に酷似していた。NAの平均値はCV条件で12.5 unit、FV条件で4.4 unitで、前者が有意に高値であった。声帯長の平均値はCV条件で11.6 mm、FV条件で15.2 mmで、伸展率の平均値は32.0 %であった。F0の平均値は、CV条件で177.3 Hz、FV条件で347.9 Hzで、後者が有意に高値であった。さらに6ヶ月後の吹鳴実験では、2条件いずれにおいても初回同様のF0の値が測定された。以上の結果を、Anat Sci Int.誌に発表した。
|