研究課題
研究成果として前年度から投稿を試みていた「Excised human larynx in N-vinyl-2-pyrrolidone-embalmed cadavers can produce voiced sound by pliable vocal fold vibration.」の論文が、Anat Sci Int.誌に原著論文として最終的に採択・公開された。同論文では、NVP固定cadaverからの摘出喉頭を用いた吹鳴実験結果について報告したが、この運動生理学研究モデルにおける発声時の声帯振動を高速度デジタル撮影を用いて観察した結果、認められた声帯振動様式は生体での声帯振動に酷似していた。さらに、声帯の振動数、振幅、そして伸長率も生体同様であった。加えて、このモデルでは、6ヶ月後でも実験に再現性が認められ、声帯の運動生理学研究モデルとして極めて優れていることがわかった。我々はこの摘出喉頭を運動生理学研究モデルとして利用するだけでなく、臨床的に重要な喉頭の形態学の検証にも用いたが、日本気管食道科学会の教育シンポジウムにおいて、「経皮的気道確保」、のタイトルで講演するなかで、この検討で得られた喉頭形態学について解説した。この形態学に関しては、多くの医師が頸部の処置を学ぶ際に利用する教科書である「耳鼻咽喉科外来処置・外来手術最新マニュアル」のなかでも、「急性呼吸困難の対応」の項目を分担執筆した際に、輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術について述べる中で情報の一部として活用した。近日中にオンラインで発刊予定である「外科的気道確保マニュアル第2版」のなかでも、極めて臨床的に重要な情報としてこの研究成果が掲載されることが決まっている。NVP固定cadaverからの摘出喉頭における組織学的な検討、そして音声改善手術の影響に関する検証に関しては、今後の課題として準備を進めている。
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