研究課題/領域番号 |
20K09740
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田中 真琴 日本大学, 医学部, 助教 (00526121)
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研究分担者 |
野村 泰之 日本大学, 医学部, 講師 (20297815)
飯野 正光 日本大学, 医学部, 上席研究員 (50133939)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 味細胞 / TRPM5遺伝子 / カルシウムシグナル |
研究実績の概要 |
味覚受容器機構において、味蕾細胞内Ca2+シグナルが重要な役割を果たすことは、細胞・分子レベルの研究で明らかにされてきているが、味覚受容器が生理的な 構築を維持した状態でのカルシウムシグナル機構に関しては未知の部分が多く残されている。本研究ではタンパク質型高感度カルシウムインジケーターを用いて、これまでに行われていない生体内での味覚受容器のカルシウムシグナルを計測することを目的としている。これまでにCRSPR-Cas9という遺伝子組み換え技術を使用し、味蕾Ⅱ型細胞に特異的に存在する膜タンパクであるTransient receptor potential cation channel subfamily M member 5(TRPM5)遺伝子にテトラサイクリンアクチベーターを導入したマウス、TRPM5特異的tetracycline transactivator(tTA) 発現マウスの作成に成功した。その完成したマウスをTet-Oシステムを使用した、全身の全細胞に蛍光カルシウムセンサー(YC-NANO50)を持つ遺伝子改変マウスと交配を行い、TRPM5特異的にYC-NANO50発現させたマウス(TRPM5特異的YC-NANO50発現マウス)を作成した。TRPM5特異的YC-NANO50発現マウスの舌を摘出し、免疫染色の手法を用いて味蕾Ⅱ型細胞にYC-NANO50が発現していることが確認できた。TRPM5特異的YC-NANO50発現マウスに腹腔内麻酔を行ない、マウスが生きている状態で舌を露出させ、蛍光実体顕微鏡を用いてマウスの茸状乳頭の味蕾が安定的に観察できる実験系を確立し、Ⅱ型味細胞内の味情報伝達の必須であるイノシトール3リン酸(IP3)を分解する酵素を遺伝子組み換え技術を用いて、TRPM5特異的YC-NANO50発現マウスのⅡ型味細胞のみに発現させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度作成したTRPM5特異的tetracycline transactivator(tTA)発現マウスを使用した実験系で、麻酔下マウス舌に呈味物質を滴下し茸状乳頭の複数味蕾の同時Ca 2+イメージングの測定を開始し、呈味物質の刺激によるⅡ型味細胞内のCa 2+シグナル測定に成功した。またⅡ型味細胞内の味情報伝達の必須であるイノシトール3リン酸(IP3)を分解する酵素を遺伝子組み換え技術を用いて、作成したマウスのⅡ型味細胞のみに発現させ、IP3抑制でⅡ味細胞内での味情報伝達が阻害されることをin vivoで確認した。Ⅱ型味細胞の味覚受容メカニズムがIP3依存的なCa2+放出経路を介するという単離細胞を用いた先行知見と矛盾しない結果であり、これをマウスin vivoの複数味蕾で実証した初めての知見を得たことから、概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はデータの解析をすすめたうえで、様々な味質を呈示し、Ⅱ型細胞ごとに甘味、苦味、うま味へのⅡ型細胞のなかでも異なる味覚受容体に対応した反応の違いなどを検討を進める予定である。 また高濃度塩味に関して反応を示すⅡ型細胞の存在を認め、II型味細胞に未知の塩味受容体の存在、又は塩味応答したI型味細胞からII型味細胞への細胞間シグナルが存在の検討をすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験系の確立に注力したが、既存の設備を使用することで物品費の使用が少なかった。今後、情報解析のためのPCやソフトなどの物品費を計上する予定である。 また、新型コロナウイルス感染症の影響で、オンラインの学会が多く、旅費の使用が少なかった。次年度はすでに、5月と9月に学会発表を控えており、前年度分を使用する予定である。
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