(ア)臨床学的検討 日本口腔・咽頭科学会主導の扁桃病巣疾患診療の手引き作成において、委員長として、各委員と共同し作成を進めた。本書では、扁桃の免疫学的機能、代表的疾患である掌蹠膿疱症、IgA腎症の発症機序、それらの疾患に加えて、胸肋鎖骨過形成症、乾癬、IgA血管炎、PFAPA症候群、反応性関節炎などの各扁桃病巣疾患に対する扁桃摘出術の効果を検討した報告を集め、データーを検討し、表としてまとめ、解説文とともに記載した。 (イ)扁桃病巣疾患における扁桃細菌叢の検討 現在、当科で保存している扁桃組織からDNAを抽出、16s rRNA菌叢解析を外部委託会社と連携し行っている。現在、習慣性扁桃炎、掌蹠膿疱症、IgA腎症患者からの扁桃組織を各20例検討し、データーを得ている。 (ウ)ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 近年、IgA腎症の腎尿細管間質ではCXCR3陽性T細胞の浸潤を認めると報告されている。その発現を扁桃で検討した結果、IgA腎症患者では扁桃単核球のCD3+CXCR3+細胞数の割合が非IgA腎症患者と比較して有意に増加していた。また、末梢血の陽性細胞数の測定では、疾患群間での変化はないものの、扁桃摘出前後でIgA腎症群のみ低下する傾向が認められた。また、低下した症例は有意に扁桃摘出後の臨床的寛解を得る確率が高かった。 (エ)IgA腎症扁桃における糖鎖不全IgA産生 IgA腎症においてヒンジ部糖鎖不全のIgAが病態に関与していることが知られている。IgA腎症患者の扁桃摘出前後の末梢血におけるIgAの糖鎖をGd-IgA1(Galactose-deficientlgA1)Assay KITにて解析した。半数に減少を認めたが、残りの半数は増加を認めた。
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