研究実績の概要 |
ω3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)には多数の代謝物が存在し、近年その抗炎症作用が注目されているが、個々の代謝物の機能についてはほとんどわかっていない。また、上気道炎症に対するEPA代謝物の抗炎症作用について検討した報告はない。代表者はEPA代謝物のうち17,18-epoxy-eicosatetraenoic acid (17,18-EpETE)の抗炎症作用に着目した。 上気道炎症は、外来環境抗原によって引き起こされる「好酸球性炎症」と細菌・ウイルス感染などで生じる「好中球性炎症」に大別される。本研究の目的は、17,18-EpETE の抗炎症作用を、それぞれの病態に応じた炎症刺激と培養細胞、さらにマウスモデルを利用して検討し、難治性上気道疾患であるアレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎、非好酸球性副鼻腔炎などに対する、ω3脂肪酸代謝物を利用した、安全かつ低侵襲な新規治療法開発のための基盤を構築することにある。 好酸球性炎症に対する抗炎症作用として、ヒトILC2をIL-33で刺激して産生されるIL-5/IL-13に対し、17,18-EpETEによる抑制作用が見られるのかを検討した。またIL-33点鼻で作成した自然型好酸球性炎症マウスに対し、17,18-EpETEを投与することで鼻粘膜の好酸球浸潤や粘液産生、肺胞洗浄液中のIL-5やIL-13を抑制するか検討した。 好中球性炎症に対する抗炎症作用として、培養ヒト気道上皮細胞をTNF-αで刺激して産生されるIL-6/IL-8/MUC5ACに対し、17,18-EpETEを投与することで抑制作用が見られるのかを検討した。またLPS点鼻で作成した好中球性炎症のマウス鼻炎モデルに対し、17,18-EpETEを投与することで鼻粘膜の好中球浸潤や粘液産生、肺胞洗浄液中のIL-6、KCなどを抑制するか検討した。
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