ヒト由来の頭頸部癌細胞株(FaDu、Detroit562、HSC-2、HSC-4 )を用い、これらの細胞の正常酸素分圧および低酸素下で培養し、HIF1-αと低酸素関連分子、免疫応答に関連する遺伝子発現、特にPD-L1発現について解析した。 Detroit 562では低酸素培養下でHIF1-αの発現が上昇し、これにあわせてPD-L1発現が上昇した。その他の免疫関連遺伝子(PD-L2、HVEM、Galectin9など)は発現上昇しなかった。HSC-4ではHIF1-αは反応しなかったが、低酸素培養によりPD-L1は高度に上昇した。FaDuやHSC-2細胞ではPD-L1の上昇は生じなかった。これらのことから、低酸素下によりPD-L1発現が生じ、腫瘍細胞が免疫細胞より逃避する機構が働くことが推測された。これに対し、低酸素下でもHIF1-α発現が変化しない、即ち低酸素環境に影響を受けない細胞があることが推測された。 次に、HIF1-α阻害薬(KC7F2)を用い検討を行った。Detroit 562では低酸素培養下で上昇したHIF1-αおよびPD-L1発現がKC7F2を負荷することにより上昇しなくなり、その効果はKC7F2の濃度依存性であった。低酸素培養下でHIF1-α発現の変化のなかったHSC-2についてもKC7F2を投与したところ、HIF1-αおよびPD-L1発現の低下が生じた。これらのことからHIF1-α発現によりPD-L1発現が遺伝子レベル(mRNAレベル)でコントロールされていることが示された。
次に、それぞれの腫瘍細胞の低酸素下で培養し、PD-L1発現を蛍光免疫染色で評価し、mRNA同様に低酸素時にPD-L1発現が上昇することを確認した。
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