研究課題/領域番号 |
20K09766
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
馬場 隆之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00361725)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 強度近視 / 眼軸長延長 / 強膜 / 線維芽細胞 / 高血糖 |
研究実績の概要 |
全世界的に近視人口は増加しており、2050年には世界人口のふたりに一人は-0.5D以上の近視であると予想されている。またそのうち10%程度は、-5.0D以上の強い近視であると考えられ、近視度数が増えるほど眼科的合併症(網膜剥離、緑内障など)が増加するため、近視及び近視度数の増加は問題である。近視度数の非常に強い強度近視(-6.0D以上)では、眼軸長が延長していることが知られており、眼球壁の菲薄化に伴い、後部ぶどう腫と呼ばれる眼球後極部の形態変化が生じる。後部ぶどう腫の生じた眼では、網脈絡膜萎縮や牽引性黄斑症などが生じやすくなり、大きな視力低下に至る可能性がある。この後部ぶどう腫の発症に密接にかかわるのが、強膜の菲薄化である。強膜菲薄化には、強膜コラーゲン線維のリモデリングが関与している。本研究では高血糖条件下に、強膜リモデリングと、強膜菲薄化、さらに眼軸長延長が生じるかを検討する。昨年度まではラット強膜線維芽細胞の培養が十分に行えていなかったが、本年度は培養条件の調整により培養が可能となったため、各種アッセイを行い、高グルコース条件下では、ラット強膜線維芽細胞の増殖が抑制されることが見いだされた。またストレプトゾトシンにより高血糖ラットを誘導し、眼瞼縫合による視覚遮断による眼軸長延長モデルを用いて、高血糖が眼軸長延長にもたらす影響を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット強膜由来線維芽細胞は、安楽死後摘出したBNラット眼球から、前眼部と網膜、網膜色素上皮、脈絡膜を除去したのち、初代培養(DMEM+10%FBS+PS)を行い、1回継代培養後にwound healing assayを行った。高グルコース条件下で培養を行ったものは、低グルコース条件に比べて増殖が遅かった。CCK-8を用いたcell proliferation assayでは、グルコース濃度と細胞増殖の速度には有意な関係は見られなかった。ラット強膜由来線維芽細胞による、in vitroの検討は順調に行うことができた。また、STZ誘導ラット高血糖モデルにおける、眼瞼縫合による視覚遮断による眼軸長延長の検討を行った。3週齢のSDラットに対して眼瞼縫合およびSTZ投与を行い、縫合後4W、8Wで眼軸長の測定を行い、安楽死後に眼球摘出を行った。強膜を透過電子顕微鏡で観察し、強膜コラーゲン線維の観察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
眼瞼縫合後8週間で摘出した強膜組織の解析を引き続き行う。眼球を二分割し、電子顕微鏡観察と免疫染色を今後行う予定である。透過電子顕微鏡では強膜コラーゲン線維の太さや走行の変化を観察する。また免疫染色は、線維芽細胞のリモデリングと強膜コラーゲンの新生を見るため、Col1、MMP2、Vimentinなどの発現を観察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
眼軸長延長モデルの強膜組織はブロックとしてそれぞれ電子顕微鏡と免疫染色用に保存している。年度末で実験を行うことができなかったが、免疫染色用の試薬などを購入し、今後実験を行う予定である。
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