研究課題/領域番号 |
20K09767
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤村 裕正 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70444081)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 眼球運動 |
研究実績の概要 |
本研究ではジャイロスコープを搭載した近赤外線カメラによるヘッドマウント型眼球運動追跡機能を活用し、頭位変換を行うことで前庭入力を変化させた場合の眼球運動を測定し、その制御機構を解明すること、眼疾患・中枢疾患が眼球運動に及ぼす影響を神経生理学的に検討すること、を目標にしている。 脳幹障害では重力加速度に対する反射性の眼位制御機構の破綻を生じ、頭位により影響を受ける上下眼位ずれを生じうる。本年度は、頭位変換時の眼球運動測定として、①脳幹部障害により中枢性に上下眼位ずれを呈する場合、②滑車神経麻痺により末梢性に上下眼位ずれを呈する場合、それぞれにおける座位と仰臥位における眼位測定を行った。被験者には正面正中の指標を2秒間固視させ、この位置をゼロ点とした。その後指標を消失させた状態で眼位変化を10秒間記録した。指標消失後からのゼロ点からの眼位変化を一次近似回帰直線として算出し、指標消失後10秒時点での一次回帰直線で得られた眼位を最終眼位とした。脳幹部障害として延髄梗塞3例,滑車神経麻痺3例、合計6例の中で2例(延髄梗塞1例,滑車神経麻痺1例)が1度以上の上下斜視を呈した。左延髄梗塞による右眼高位左眼低位の上下斜視角は座位では4.21度、仰臥位では2.06度と仰臥位で軽減したのに対し,右眼高位左眼低位を示した右眼の滑車神経麻痺での斜視角は,座位では1.05度、仰臥位では1.12度と仰臥位での軽減はみられなかった。中枢性障害と末梢性障害とで頭位変換に伴う上下の眼位ずれに差を認め、定量的な評価を行うことが可能であった。本研究結果は2021年に開催された第59回日本神経眼科学会総会にて口演発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、感染予防の観点から被験者の測定が予定よりやや遅れている。しかしながら、座位における上下方向および水平方向における周辺視ではノイズが乗りやすかった、という昨年度行ったパイロットスタディの結果を反映させ、測定プログラムの改変を行い、測定角度を可変式に変更した。その上で、データの正確性を担保するため、振幅を12度および6度の2パターンを設定し、内転外転眼球運動の測定を可能にした。現在健常人を対象に座位、両側臥位にて眼位を測定中である。 同時に、中枢性脳幹部障害に伴う上下眼位ずれ及び滑車神経麻痺による末梢性障害に伴う上下眼位ずれの測定を引き続いて行っている。
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今後の研究の推進方策 |
被験者の安全を第一に考え、新型コロナウイルス感染症の蔓延状況を鑑みながら測定を継続していく。①上下眼位ずれが1°以上である中枢性脳幹部障害、末梢性滑車神経麻痺の比較の結果を報告したが、1°以内の微小な上下ズレを呈した場合に関しても解析を行う。さらに現在の解析方法を見直し、固視消失後の眼位変動の時間を検討し、眼位ずれの大きさのみならず時系列でのずれの変化を評価する。新規の被験者の測定を行いつつさらなる定量的評価を行う ②重力が眼球運動に及ぼす影響を定量的に評価する。ノイズの影響を減らすため、内転外転運動に焦点を絞り、頭位変換(座位、両側臥位での測定)を行い重力の入力を変化させた状態での眼球運動測定を行う。最終年度でもあり、得られたデータを速やかに順次解析し、検討、考察を加え学会発表、論文作成を行っていく。
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