研究課題/領域番号 |
20K09770
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
村田 敏規 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50253406)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光干渉断層計 / アンギオグラフィー / 網膜静脈分枝閉塞症 / 血管密度 / 網膜感度 |
研究実績の概要 |
Optical coherence tomography Angiography(OCTA; 光干渉断層撮影アンギオグラフィー)は網膜血管を、内層から外層へ層別に三次元的に描出可能である。網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)では、静脈閉塞部位の血流密度(PD)が低下する。PDは閉塞部の網膜感度(RS)と正の相関があることを報告した。(Rachima S, Hirabayashi K, Murata T et al. Prediction of post-treatment retinal sensitivity by baseline retinal perfusion density Sci Rep 2020 Jun 15;10(1):9614) 網膜静脈分枝閉塞症に罹患した網膜において,黄斑の網膜感度と血流密度(PD)の経時的な相関関係を調べた。網膜感度はマイクロペリメトリーで,血流密度(PD)は光干渉断層計アンギオグラフィで測定した。抗VEGF治療後1カ月の血流密度(PD)が,抗VEGFによる黄斑浮腫治療が1年後に成功したときの網膜感度の予測因子となる可能性を検討した。ベースライン(1M)、6ヶ月後、12ヶ月後の網膜感度とPDの測定値の相関関係を調べた。すべての時点で、網膜感度とPDの間には有意な正の相関があり(ベースライン(1M)、r = 0.67、P < 0.0001、6ヵ月、r = 0.59、P < 0.0001、12ヵ月、r = 0.62、P < 0.0001)、1ヵ月後のPDと12ヵ月後の網膜感度の間には(r = 0.63、P < 0.0001)、有意な正の相関があった。ベースライン時またはその直後に光干渉断層撮影装置を用いて測定したPD値が、抗vascular endothelial growth factor (VEGF)治療1年後の網膜感度を予測できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Optical coherence tomography Angiography(OCTA; 光干渉断層撮影アンギオグラフィー)は網膜血管を、内層から外層へ層別に三次元的に描出可能であるが、黄斑浮腫、硝子体混濁、低視力などの場合は、解析に耐える画像を撮影できない。我々は種々の条件を検討して、抗vascular endothelial growth factor (VEGF)薬を使い、黄斑浮腫の治療をして視力が上がった状態では、解析に耐える高解像度の網膜血管を撮影できることを明らかにした。従来は高解像度の画像を得ることができずに、研究の最大の障害となっていたので、この発見は大きなbreak throughとなった。 我々はさらに、網膜血管密度の変化を二値化した後に、画像処理的に計測できることを示した。また、Microperimetry 3 (NIDEK Aichi Japan)を使って、眼底写真の網膜血管と対比しながら、網膜感度を測定できることを利用して、網膜血管密度と網膜感度の相関を検討する方法を確立した。この一年間の網膜静脈閉塞症の患者の蓄積とともに、解析用のデータも蓄積され、今後の研究の発展が期待できる状況が整ってきた。従来、網膜感度はHumphry Field Analyzer (Zeiss Dublin California USA)でしか測定できなかったが、この方法では眼底の所見、特に血管との相関を検討することが困難であった。我々は、眼底所見つまり大きめの網膜血管を指標として、眼底所見、特に毛細血管を含めた網膜血管の密度と、網膜感度の相関を検討できる方法を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
我々は網膜の血管密度と網膜感度に相関があることを報告した。(Rachima S, Hirabayashi K, Murata T et al. Sci Rep 2020 Jun 15;10(1):9614)この結果に基づいて、今後は網膜静脈分枝閉塞症の発症直後の網膜毛細血管の閉塞、そして、これを反映する網膜血管密度と抗VEGF薬治療後の視力に相関を探すことを試みる。 視力を決定づける中心窩の視細胞には、栄養血管が網膜にはない。中心窩網膜に血管があると、これが光を遮り、良好な視力を得ることができないからである。すなわち、中心窩の血管密度と視力の関係を検討することができない。そこで、我々は中心窩を中心とする4象限それぞれの網膜血管密度を、発症直後から1年後まで測定して、最終視力と最も相関する網膜血管密度はどれであるかを検討する予定である。特に網膜静脈分枝閉塞症の発症直後の網膜血管密度で、視力を予測できるかどうかを検討する。
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