研究課題/領域番号 |
20K09778
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
丸山 悠子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60516003)
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研究分担者 |
上野 盛夫 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40426531)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 角膜内皮細胞 / ミトコンドリア / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
環境適応能力で勝る細胞が劣る細胞を能動的に排除する「細胞競合」の破綻が角膜組織の機能不全病態に係るか否かの検証のために高齢、若年双方の正常ドナー由来の角膜内皮組織と角膜内皮機能不全患者由来の角膜内皮組織のエネルギー謝機能を細胞外Flux Analyzerを用いて解析した。OCR(酸素消費速度)はミトコンドリア呼吸を反映し、ECAR(細胞外酸性化速度)は解糖系を反映している。6歳から70歳までの正常ドナー由来の角膜内皮組織(n=12)の最大呼吸能には差はなかった。一方、角膜内皮機能不全患者由来の角膜内皮組織の最大呼吸能は同年代の正常ドナー由来の角膜内皮組織に比して有意に低下していた。この結果は培養ヒト角膜内皮細胞において成熟分化型細胞に比して相転移細胞で最大呼吸能が有意に低下していたことに対応する。角膜内皮機能不全患者由来の角膜内皮組織と培養ヒト角膜内皮細胞の相転移細胞では共通してmiR34a, 378が低発現であること、miR34aはピルビン酸→乳酸経路を触媒するLactate Dehydrogenase Aを阻害することで、解糖系をミトコンドリア呼吸に偏奇させるとされていることと併せて、ミトコンドリア代謝機能の偏奇が角膜内皮機能不全の病態である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に引き続き、Covid-19の流行で研究進行のために必要な米国アイバンクからのドナー角膜組織の入手が困難と滞たことが主たる理由である。ドナー角膜組織から培養角膜内皮細胞を作成し実験に使用しているため予定した実験計画に必要な十分な細胞を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー代謝特性の変化と細胞競合現象との関連評価を行う。環境適応能力で勝る細胞が劣る細胞を能動的に排除する「細胞競合」の破綻が、培養ヒト角膜内皮細胞の代謝階層性に依拠して起こるか否か、そして角膜組織の機能不全病態に係るか否かの検証に挑戦する。成熟分化細胞と相転移細胞で細胞が内含する全てのミトコンドリアを染色するMTG染色と膜電位を維持したもののみを染色するTMRM染色を比較し、細胞競合の病態増悪における役割を明確にする。 環境因子(分泌型miRNA・Exosome)によるエネルギー代謝特性の変動の明確化する。ExosomeがCargo機能を含め、エネルギー代謝の階層的変動に係る可能性も明らかにする。成熟分化細胞に比して相転移細胞ではmiR34a, 378が低下しており、miR34aはピルビン酸→乳酸経路を触媒するLactate Dehydrogenase Aを阻害することで、解糖系をOXPHOS系に偏奇させるとされているため、乳酸シャトル系や解糖系に係る酵素の発現と活性についても解析する。培養系で推定された代謝産物の測定を、角膜内皮機能不全患者において前房水・血漿成分の代謝産物の測定を実施し、上述知見が、患者病態と直接的に関連するか照合する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の蔓延により米国アイバンクからの研究用ドナー角膜組織に入手が滞り研究を実施できなかったために次年度使用額が生じた。現在のところ、米国アイバンクからの研究用ドナー角膜の入手に使用する予定である。本年度の研究用ドナー角膜組織の入手について米国アイバンクとすでに調整は行っている。万一、今年度も研究用ドナー角膜組織の入手が滞った場合には、前房微小環境(前房水)中の代謝産物の網羅的解析に使用することを検討する。
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