研究課題/領域番号 |
20K09781
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
丸子 一朗 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10443871)
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研究分担者 |
飯田 知弘 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50241881)
長谷川 泰司 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (70623487)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脈絡膜新生血管 / 脈絡膜血管異常 / 脈絡膜厚 |
研究実績の概要 |
脈絡膜は加齢に伴い血流障害を生じ、結果として局所的(特に脈絡毛細血管板)に虚血に至ると脈絡膜新生血管の発生原因になる。一方で、近年脈絡膜肥厚が脈絡膜中大血管拡張によって生じた場合、拡張部位で脈絡膜毛細血管板が圧迫されると結果として血流障害に至り脈絡膜新生血管の発生原因となりうることがわかってきた。 今回我々は治療歴もなく滲出のない脈絡膜新生血管の目の特徴を調査した。対象は37人の治療歴のない連続した患者(30人の男性、7人の女性、平均69.8歳)の38眼。非滲出性脈絡膜新生血管は、すべての眼で光干渉断層血管撮影によって確認した。光干渉断層計で滲出がないことを確認した。症状、視力、脈絡膜新生血管のサイズ、および僚眼の状態を評価した。患者を縦断的に追跡し、追跡期間の長さと滲出液の発生を各患者について記録した。また、以前の滲出液に関して紹介病院からの患者の医療記録を調査した。 結果: 静止状態のCNVのすべての眼は、網膜色素上皮下の1型脈絡膜新生血管と診断された。紹介病院のカルテから15眼(39.5%)で事前の滲出が確認された。症状は18眼(47.3%)にみられた。滲出性脈絡膜新生血管は僚眼の12眼に存在した。滲出液は、平均25.1か月の追跡期間中に、12眼(31.6%)に発生した。半分の眼には以前滲出液がありました。フォローアップ期間中に滲出を発症した眼のベースラインでの脈絡膜新生血管は、滲出のない眼よりも大きかった。ただし、差は有意ではありませんでした(0.59±0.47対0.48±0.32mm 2、P = 0.50)。脈絡膜厚にも差はなかった。 結論:非滲出性の脈絡膜新生血管は、平均2年間の追跡期間中に、約30%に滲出液を発症します。これらの発見は、以前のアクティブな脈絡膜新生血管のある眼と区別できない可能性があることを示している(Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2021 Mar 2. Online ahead of print)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常眼と中心性漿液性脈絡網膜症は脈絡膜血管の血管構造自体が異なっている。これは脈絡膜厚や脈絡膜欠陥密度の違いで客観的に評価可能であり、これに関しては以前報告している.。今回、光干渉断層計(OCT)で得られた脈絡膜血管系のen face画像を深層学習(DL)解析して中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)を診断するとともに,ヒートマップからDLの関心領域を解析した。 CSCの53眼と正常眼47眼の計100眼を対象として光干渉断層血管撮影(OCTA)と同時に、12×12mm四方のボリュームスキャンを取得した。脈絡膜厚の2分の1の厚みで脈絡膜血管のen face画像を解析用に作成した。全100枚のen face画像を,トレーニング用の80枚と検証用の20枚に分けた。分類には,ソニーが開発したNeural Network Console(NNC)と,Googleが開発したKerasを用い,16層の畳み込みニューラルネットワークで分類した。また、DLで抽出した特徴量に基づくヒートマップの活性領域を、Kerasで実装したgradient-weighted class activation mappingでパーセンテージとして評価した。 結果は検証の平均正答率は,NNC が 95%,Keras が 88% でした.この差は有意ではなかった(P>0.1)。ヒートマップ画像の平均活性領域は、CSC眼では12.5%で、正常眼の79.8%に比べて有意に低かった(P<0.01)。 結論として CSCは、プログラム、畳み込み層の構造、データセットが異なっていても、脈絡膜血管のen face画像から高精度にDLで自動診断できる。ヒートマップ解析では、DLは脈絡膜血管が占める面積とその均一性に着目していることがわかった。DLはCSCの診断に役立つ。 脈絡膜血管異常に関して、Deep learningを用いることで各種パラメータを完全に把握しなくても解析できる可能性が示された(in revision)。
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今後の研究の推進方策 |
非滲出性脈絡膜新生血管症例の脈絡膜血管構造を解析する。脈絡膜厚に関してはその滲出出現への影響は少ない結果であったが、脈絡膜血管拡張がその脈絡膜新生血管発生要因になる可能性がある。 光干渉断層血管撮影で確認された非滲出型脈絡膜新生血管と脈絡膜血管構造の解析を行うことで、脈絡膜血管拡張部位の脈絡膜新生血管形成に関わる因子を特定する。 方法としては光干渉断層血管撮影と同時に、12×12mm四方のボリュームスキャンを取得したうえで、脈絡膜厚の2分の1の厚みで脈絡膜血管のen face画像を作成し、その組織解剖学的位置と脈絡膜新生血管出現部位の関係を確認する。 これによって臨床的に視細胞変性疾患や視細胞障害をきたす網膜疾患の網脈絡膜血管形態および血流を光干渉断層血管撮影、レーザースペックルフローグラフィおよび共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)を使用して非侵襲的に観察し、視細胞の状態が 脈絡膜の形態および血流変化を誘導するメカニズムの解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会が全てオンラインになったため また実験室も閉鎖されていたため組織学的検討は次年度に繰り越しになったため
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