研究課題/領域番号 |
20K09781
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
丸子 一朗 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10443871)
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研究分担者 |
飯田 知弘 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50241881)
長谷川 泰司 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (70623487)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脈絡膜 |
研究実績の概要 |
脈絡膜は加齢に伴い血流障害を生じ、結果として局所的(特に脈絡毛細血管板)に虚血に至ると脈絡膜新生血管の発生原因になる。滲出型加齢黄斑変性(AMD)は脈絡膜新生血管が生じる典型的な病態の一つであるが、その治療における第一選択は抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射である。2020年5月に約10年ぶりの新しい抗VEGF薬である、burolocizumab(ベオビュ)が発売された。 今回AMD患者を対象に、brolucizumab硝子体内注射後の中心窩下脈絡膜厚(SCT)の変化を検討した。方法はAMD患者72名の73眼を対象とした.3ヵ月後のSCTを光干渉断層計で評価した。73眼は新規治療群(43眼)と、他の抗VEGF治療から切り替えたスイッチ群(30眼)に分類され、新規治療群ではSCTがベースラインの236.5±98.8μmから3カ月後には200.4±98.3μmへと有意に減少した。スイッチ群でもSCTはベースライン時の229.0±113.2μmから3ヵ月後には216.9±110.2μmへと有意に減少した。以上、AMDに対するBrolucizumabの硝子体内注射は、新規治療群およびスイッチ群のいずれにおいてもSCTを有意に減少させた。Brolucizumabは、脈絡膜に重大な解剖学的変化をもたらす可能性があり、おそらく他の抗VEGF剤でこれまでに報告されている以上の変化をもたらすと考えられる(Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2022)。 一方で、Brolucizumabの硝子体内注射後の眼内炎症(IOI)が問題となったため、127例におけるIOI発症率についても報告した(Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常および疾患眼における臨床的なデータ収集は順調に進んでいる。また正常眼と疾患眼における脈絡膜形態の違いについても人工知能(AI)研究によって明らかになってきた(PLoS One 2021)。更に脈絡膜形態に関しては超広角および広角光干渉断層計によって、眼底後極部だけでなく、周辺部においての脈絡膜についても調査が進んでおり、一部の疾患に関しては報告もしている(Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2022、Retina 2022)。
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今後の研究の推進方策 |
臨床データに関しては現時点で投稿中および作成中である。今後さらに、臨床的に視細胞変性疾患や視細胞障害をきたす網膜疾患の網脈絡膜血管形態および血流を光干渉断層血管撮影、レーザースペックルフローグラフィ および共焦点走査型レーザー検眼鏡(cSLO)を使用して非侵襲的に観察し、メカニズムの解明を行う。 本年は豚眼を用いた組織学的検討も合わせて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
組織的実験がまだ行われていないことと、海外学会参加ができず旅費がかかっていないため
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