以前、我々はプロトタイプ超広角光干渉断層計および広角光干渉断層計における垂直断撮影を用いて、中心性漿液性脈絡網膜症の脈絡膜は黄斑部を含む眼底後極部でのみ厚く、周辺では厚くないことを報告した(Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2022、Retina 2022)。ただし、それでは上下しかみていないことから、12本のラジアル撮影を行い、眼球全体の脈絡膜の厚みおよび体積を調査したところ、垂直方向のみならず、水平方向でも同様に周辺の厚みはそれほどないことを見出した(Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2024)。この結果は、中心性漿液性脈絡網膜症の後極における局所的な脈絡膜肥厚が先天性強膜変化を含むことを示しており、、本疾患の病態生理学に影響を与える可能性を指摘することができた。
また、脈絡膜血流が黄斑新生血管の出現に影響すると考えられているpachychoroid neovascularizationが、日本人の新生血管型加齢黄斑変性と診断され、治療されていた100例のなかで、約40%を占めていることを明らかにしたと同時に、その治療経過は典型的な新生血管型黄斑変性疾患よりも治療反応性が良好であったことも示した(Sci Rep 2023)。それ以外にも3型黄斑新生血管における発症初期病変を光干渉断層血管撮影で評価することで、本疾患が脈絡膜ではなく網膜起源の新生血管であることを証明することができた(PLoS One 2023)。
以上、中心性漿液性脈絡網膜症、pachychoroid neovascularization、新生血管型加齢黄斑変性の脈絡膜の状態を評価することで、脈絡膜厚を規定する因子が視細胞だけでなく、眼球全体の血流に対する眼底後極部に限局した眼球構造の関与も存在することが示された。
|