研究課題/領域番号 |
20K09782
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
林 寿来 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30533715)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / 間葉系幹細胞 / 上皮バリア / 組織修復 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性の主要な原因は、目に対する太陽光照射、代謝老廃物の蓄積、炎症反応等に起因して産生される酸化ストレスである。酸化ストレスは網膜色素上皮細胞等に損傷を与え、脈絡膜血管新生、網膜機能障害、失明につながることから、酸化ストレスの抑制は初期治療の鍵である。本研究では、間葉系幹細胞由来(MSC)の細胞外小胞が、加齢黄斑変性に対して再生治療効果をもたらすのかについて明らかにするものである。病態生理学的な状況を想定し、酸化ストレス刺激を受けたMSCが放出する細胞外小胞に着目する。令和2年度においては以下の検討を行なった。 (1)MSC由来エクソソームの網羅的解析:MSCに対して酸化ストレスを付加し、培養上清から細胞外小胞の回収を行った。その際、研究協力者の産総研・池本博士から習得した方法を用いた。これまでのところ、粒径解析やマーカーの発現確認などから効率よく精度の高いエクソソームが生成されたことが確認された。タンパク質を抽出後にiTRAQ標識を行い、TripleTOF質量分析を行った。ストレス刺激によってエクソソーム中のタンパク質発現パターンが変わることが明らかになった。(2)培養網膜色素上皮が形成する上皮バリアに対するMSC由来エクソソームの効果の解析: 上皮バリアにダメージを与え、バリア機能の破綻を誘導した。経上皮電気抵抗の測定を行ったところ、エクソソーム投与により有意にバリア機能の修復が認められた。以上の結果から、(1)で得られたエクソソームのどの分子が、バリア修復で機能しているのかを培養レベルで確認する手法が有効であることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由は、間葉系幹細胞および、網膜色素上皮培養細胞の生育が悪く、また生育後の細胞保存もうまくいかずに、サンプリングや解析の繰り返しが思うように進まないためである。複数の細胞ラインを何度も購入して検討しているのだが、いずれにしても過去の論文で昔から報告されているようにはうまく生育しない。これらの問題の解決は難しいのでさらなる困難を回避するために、今まで使っていたものと異なる細胞をさらに細胞バンクから入手し再び解析に用いる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度においては、以下の研究を進める予定である。 (1)新しく購入する細胞(網膜色素上皮細胞、間葉系幹細胞)を用いて、昨年度までの細胞培養実験の再現性を確認する。また、MSCエクソソームにおけるタンパク質の網羅的発現変化の解析においても、継続して繰り返し実験を行う。 (2)マウス加齢黄斑変性モデルを作成し、MSCから精製したエクソソームの移植効果を確認する。その際、モデル作成と組織学解析においては、愛知医科大学眼科の協力を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額はわずかな端数であり、使用額は予定どおりである。
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