研究課題/領域番号 |
20K09788
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 智昭 京都大学, 医学研究科, 講師 (50549095)
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研究分担者 |
大音 壮太郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (10511850)
池田 華子 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20372162)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 糖尿病黄斑浮腫 / 自己抗体 / 抗fumarase抗体 / 抗hexokinase 1抗体 / 視細胞障害 / 光干渉断層計アンギオグラフィー / 補体 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症において、抗網膜抗体のバイオマーカーとしての有用性を検討するために、臨床所見のプロファイリングを行った。特に、光干渉断層計アンギオグラフィーを用いた無灌流領域の特徴を観察し、耳側網膜における血流障害や、神経障害の状態について解析した。また、光干渉断層計での新規所見であるhyperreflective walls in foveal cystoid spacesの特徴を分析し、特に、糖尿病黄斑浮腫が抗VEGF療法に対して抵抗性を呈する予測因子となることを報告した。これらの所見は神経変性や線維化などとの関連が示唆され、今後、自己免疫との関連を検討する予定である。 糖尿病網膜症における自然免疫の臨床的なプロファイルを行うために、培養細胞を用いて、細胞障害に重要なサイトカインのリストアップを進めている。また、眼内液の収集を進めており、一定数が到達すればサイトカインの定量的解析を行う予定である。 糖尿病黄斑浮腫において、自然免疫を惹起するメカニズムを解明するために、患者血清と培養細胞を用いた実験を推進中である。患者血清が刺激となり放出される物質が、培養網膜細胞株(ARPE-19細胞と661W細胞)の細胞死を惹起することが明らかになった。また、その物質をマウスの眼内に投与した後に網膜電図及び免疫染色により解析したところ、機能的、形態的変化が確認された。この細胞障害を惹起する物質の同定、また、その分子機構を試みている途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗網膜抗体の臨床的位置づけを検討するために、詳細な臨床所見の解析が進んでいる。今後の抗網膜抗体との統計的解析を行うことで、バイオマーカーとしての有用性を明らかにできると考えている。 自己免疫に関する臨床的プロファイリングについては、病態を悪化するサイトカインの網羅的なリストアップはまだであるが、方向性が見えている。 培養細胞及び実験動物を用いたtranslational researchについては、視細胞を障害する物質を新たに見出しており、臨床導出につなげるためのデータ蓄積の準備をすすめている。 本研究のゴールに到達はしていないが、一定の成果が得られており、1年目の成果としては十分な結果が得られていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
抗網膜抗体の臨床的有用性については、今後統計的な解析を行うことで、診断や予後予測のバイオマーカーとなるか、確認を行う。 自己免疫に関する臨床的なプロファイルに関しては、2021年度の間に、重要なサイトカインを絞り込む。具体的には、培養細胞を刺激し、自然免疫と共に上昇したり、免疫のハブとなるサイトカインを同定する。また、それらが、実際、培養細胞および動物実験で重要な因子であることを確認する。 自己免疫に関するtranslational researchに関しては、まず、培養細胞を用いて、分子機構を明らかにし、その中心的な役割を果たす分子を同定することを、2021年度の目標とする。特に生化学的な手法と細胞生物学的な方法論を用いたスクリーニングを行い、共通する分子に絞り込むことで、重要因子の決定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加などの旅費を計上していたが、新型コロナのためにWeb開催となり、2020年度は旅費が不要となった。その金額分は、2021年度の物品費に回す予定である。その理由は、2020年度に予定していた以上のデータが出たため、追加での基礎実験が必要となったためである。
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