研究課題/領域番号 |
20K09790
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
徳田 和央 山口大学, 大学院医学系研究科, 学術研究員(寄附金) (50266863)
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研究分担者 |
清木 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50226619)
藏滿 保宏 北海道医療大学, 医療技術学部, 教授 (50281811)
木村 和博 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60335255)
徳田 信子 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70227578)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CRMP / リン酸化制御 / 内在性網膜前駆細胞 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
低濃度のグルタミン酸を用いて、内在性の網膜前駆細胞を活性化し、活性化に関与する網膜内のタンパク質群を同定し報告を行っている。同定したタンパク質群を制御する因子や、細胞を取り巻く代謝関連因子、エネルギー因子の解析に関する研究を進めている。 研究実施計画に基づき、眼内の内在性前駆細胞の活性化におけるタンパク質群の発現機構、リン酸化を含む翻訳後修飾のメカニズムと代謝関連因子の制御機構の解明を目的として実験を行った。内在性網膜前駆細胞の活性化におけるシグナル伝達の上流には、PI3K/Akt経路などの関与が示唆された。本年度は、Cyclooxygenase-2 (COX-2)の作用を作動薬や拮抗薬などを用いて検討を行った。同定したタンパク質群の発現はCOX-2によっても影響を受けている可能性があり、アクチン結合タンパク質に関してコルタクチンやダイナミンなどの関与について検討を行った。一連のシグナル群が網膜内のタンパク質群の発現やリン酸化が細胞骨格、特にアクチンダイナミクスにも関与している可能性が示唆された。また、網膜内のタンパク質群に関しては、質量分析を用いた翻訳後修飾を中心とした解析も進めた。 一方、成熟ラット網膜から単離したミュラー細胞を安定して継代するシステムの構築にも取り組んだ。本年度は制御した環境において形態形成や極性形成などの観察を行ったが、引き続きシステム自体の改良とリプログラミングにおけるタンパク質群のリン酸化に作用する制御酵素の同定を行う予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
眼内の内在性網膜前駆細胞の活性化について、活性化時に特異的に発現するタンパク質群やそのリン酸化制御機構、環境因子、制御因子群の動態を解析している。 本年度は、網膜前駆細胞の活性化に関与するタンパク質群のリン酸化シグナル制御機構や、細胞骨格線維の変化や再編成に関わるメカニズムなどを中心に実験を行った。制御系因子の一部に未確定な点があり、検討を進めている。 また、網膜から細胞を単離して3次元的に培養し、形態変化や極性形成などの視点から実験を行っている。システムを安定化させるのに時間を要することから、実験と並行してシステムの改良にも取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
計画書に従い、網膜再生を実現する内在性網膜幹細胞活性化の確立を目指して、次のステップを進める。 活性化にかかわるタンパク質の因子群の翻訳後修飾に関しては、組織および網膜組織から単離した培養細胞について、引き続き質量分析を用いた解析を継続する。細胞の制御を行うシグナル伝達の一部において不確定な部分があり、今後条件を再検討して解明をすすめる予定にしている。モデル動物を用いた実験では、一過性に発現過剰や発現阻害を行い、計画書に示した条件で生理学的評価ならびに解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初の予定に比べ、3次元細胞培養や抗体類、解析費用などが抑えられた。また、研究成果の報告に関して、社会的背景により前年度同様に専門学会や研究の打ち合わせがオンラインで行われたため、旅費経費としての計上がなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。 使用計画:同定しているタンパク質のリン酸化を含む翻訳後修飾に関してプロテオーム解析を行うため、サンプル処理を含む関連試薬や機器使用料に使用する予定である。
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