研究課題/領域番号 |
20K09797
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
内川 義和 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (10331159)
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研究分担者 |
岡野 真弓 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (80320498)
高橋 由嗣 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 助教 (20791768)
新井田 孝裕 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (30222730)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重心動揺 / 調節 / 輻湊 / 自律神経機能 / 滑動性追従運動 / 周波数解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、高齢者の健康寿命やQOLの低下を脅かす転倒・転落のリスク要因に関連する視覚機能を明らかにし、視覚の観点から転倒・転落予防対策を提案することを目標としている。本研究では、視覚機能を入力(視力や屈折、調節、等)、統合(両眼視機能)、出力(眼球運動)機能の下位項目に分け、歩行や日常動作の遂行に対する各視覚要素の影響および相互作用を検討し、視覚機能の観点から転倒・転落アセスメントを試みるものである。 2021年度は、2020年度に引き続き、歩行や日常動作の基盤となる立位姿勢の保持に着目し、立位時の姿勢安定性に影響を及ぼす視覚機能と影響度合いを明らかにするため、健常若年成人を対象として、調節・輻湊機能、および眼球運動が静的立位時の重心動揺に及ぼす影響について検討した。アウトカム指標として重心動揺の周波数特性、影響度合いについて自律神経機能(交感神経活性、LF/HF比)パラメータを導入し、昨年度よりも詳細な解析を行った。 本研究では、近方視時の立位姿勢保持に対する調節と輻湊の関与についての検討では、近方視時の輻湊による外眼筋固有感覚情報が姿勢安定性に関与していることが示唆され、輻湊と調節の不一致により、交感神経活動の亢進及び姿勢安定化の阻害することが考えられ、近方視時の姿勢安定化には両者の協調運動と自律神経機能の関与が示唆された。また、滑動性追従運動の眼球運動負荷により、0.3~0.4Hzの周波数帯にピークを持つ身体の揺らぎが特徴的に観察され、滑動性追従運動によるEfference copyやProprioceptive signal等の固有感覚情報を反映した特異的な姿勢応答であることが示唆された。 立位時の姿勢安定性に影響する視覚要因とその機序が明らかになりつつあり、今後、新たに推定された影響要因について、対象の年齢を拡大して検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚機能が立位時の姿勢安定性に及ぼす影響についての検討に関して、健常成人に加え、2021年度後半から2022年度にかけて、地域在住高齢者を対象とした反復測定研究デザインによる対照実験を予定している。2021年度は、健常成人データは予定対象者数を満たすことができたが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、地域在住高齢者を対象とした実験が実施できなかった。しかしながら、実験参加者のリクルート、インフォームドコンセント、測定バッテリー、解析方法についての準備は整っており、測定を実施するのみの状況となっている。なお、2021年度に得られた知見は、関連学会で成果公開することができたことから、おおむね計画通りに進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、転倒・転落のリスク要因に関連する視覚機能を明らかにすることを目的としている。歩行や日常動作の遂行に対する視覚機能の影響および相互作用について検討するために、立位時の姿勢制御に及ぼす視覚機能の影響についての基礎的検討に加え、視線解析装置を用いた奥行き方向の視線解析および眼球運動と重心動揺との関連について検討し、3次元空間における視覚機能と姿勢制御との関係性を明らかにする。特に、地域在住高齢者を対象に加え、加齢の影響について検証し、転倒・転落の視覚リスク要因を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、地域在住高齢者を対象とした対照実験の見通しが立たず、必要物品および謝金の使用実績がなかったことによる。その他の実験等に関する物品費は当初の計画通りに執行できている。次年度使用額は、2022年度計画の実験に関連する備品、消耗品に充当する計画である。
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