研究課題/領域番号 |
20K09798
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
川守田 拓志 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (80511899)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 眼振 / マウス光学系 / 弱視治療 / 模擬眼 / 視線 / 視覚野 / 発達 / 眼光学 |
研究実績の概要 |
本研究は、眼振によって生じた見る対象との視線のズレ(眼振量)を光学式マウスの原理で検出し、既存の電子ディスプレイで検出した眼振量を反映し、見る対象(映像)を動かすことで、網膜に鮮明な映像を結像させ視覚野の発達を促す装置開発を試みることである。 光学式マウスの光学系を調査し、現在いくつかの達成の方法の調査を行った。眼底に弱い光を入れて反射光を2次元センサーで動きを捉えることを基本原理とし、①弱い出力でのレーザー光学系を組み、反射光をセンサーでとらえて光電効果で出力を得て、さらにその位置場を取得すること、②既存の赤外線マウス光学系を応用して眼球の動きを検出すること、③赤外線を使用している視線解析装置からの視線情報からソフトウェアの改良で対応することである。現状、すべて試したが、①は反射光の感度調整とノイズ除去に課題があり、②は焦点距離を延長することが課題、③は視線に連動して画像を動かすことに成功しているが精度向上が課題となっている。精度と大きさ、コストの観点からどの方法がベストかを検討中である。現状、③が最も有望である。 機器としての精度検証については振動型模擬眼を完成させ、計測を実施する予定である。具体的には、3Dプリンターで模擬眼を作成し、振動器をベースに置くことで、評価が可能になると思われる。現状、機器は購入してあり、作成に向けて準備を進めている。 生体における精度検証については、眼振患者をとる前に健常眼での検証も重要と考えている。「鉄道眼振」という健常者でも起こるディスプレイで景色を流すことで再現し、眼振を測定できないか、自身の眼で簡易的に試行している。研究対象者でデータをとる際は、倫理申請を行い実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己点検による研究の進歩状況がおおむね順調に進展しているとする理由としては、視線取得精度向上やソフトウェア上の課題はあるものの視線移動に合わせて画像を動かすシステムはおおよそ完成している点にある。 2020年度の研究計画では、振動模型眼の作製と眼振取得システムの精度評価であった。振動模型眼構築に必要な機器は購入し、準備中である。2020年度は、基盤となる眼振取得システム構築の方が高い優先度と設定して取り組んだ。眼振取得システム構築における最も有望な仕組みは、現状赤外線を使用している視線解析装置からの視線情報からソフトウェアの改良で対応することであるが、ほぼリアルタイムにデータ取得が可能な状態となっている。精度や性能評価も同時並行で行っており、さらに高めていく予定であるが、視線に応じて画像がついてくるという基本的な仕組みについて感覚的には達成できていると思われる。弱い出力でのレーザー光学系を組み、反射光をセンサーでとらえて光電効果で出力を得て、さらにその位置場を取得すること、既存の赤外線マウス光学系を応用して眼球の動きを検出することについても検証を行っており、最終的にどの方法が最も適するのかについても検証を続けたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の予定では、2020年度中に光学式マウス検出系を完成させ、眼の動きに対して性能の評価を行うことであった。まず最も進行している視線解析装置を基盤として眼球の動きを検出し、ソフトウェアを改良して画像を動かすことについて、今後の推進方策を述べる。 視線データの取得は問題なく、課題は画面に反映したときにわずかに遅延が生じている状況である。ただし、画面のリフレッシュレートと視線データ取得の乖離により遅延が生じているという問題点を特定できている。こちらはさらにリアルタイムでの視線方向を表示することを課題とする。また、顔の正面方向に対して視線方向がどれだけずれているかを示す値を取得できるが、ディスプレイ上のどこを見ているか分からない点も課題であり、これを解決するため、ディスプレイ上に特殊なマーカーを表示し、カメラ画像からディスプレイを検知・認識する機能を利用する。同時にこの機能の精度、同期の正確さ、キャリブレーションを検証する。特に目を閉じたときなどに視線方向をうまく検出できず、推定された視線方向がまったく別の場所に飛んでしまう現象があり、ここを解決したいと考えている。また、眼振の精度評価は、眼振患者で起こりうる振動成分を与えることができる振動模型眼を作成し、評価を行うことが必要である。 申請書の2021年度の予定では光学式マウス検出系の小型化と安全性の確立で、2022年度は倫理申請後、健常眼ならびに眼振患者への調査としている。本年度まず取り組むこととしては、複数ある達成手法の中からの選定と予定通りの小型化と安全性の確立である。両者とも既に報告されている法規と市販技術を利用することで達成できる見込みである。 推進方策については、専門家や技術者、プログラマーの知見をお借りし、達成に向けて進めていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、コロナ禍で旅費の使用がなかったことと、眼振模型眼装置制作の若干の遅れがある。翌年度分として請求した助成金は予定通り使用予定で、2020年度の差額費用は、レンズや網膜相当の素材購入費に充てる予定である。
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