本研究は、眼振によって生じた見る対象との視線のズレ(眼振量)を光学式マウスの原理で検出し、既存の電子ディスプレイで検出した眼振量を反映し、見る対象(映像)を動かすことで、網膜に鮮明な映像を結像させ視覚野の発達を促す装置開発を試みることであった。 光学式マウスの光学系を調査し、現在いくつかの達成の方法の調査を行った。眼に弱い光を入れて反射光を2次元センサーで動きを捉えることを基本原理とし、①弱い出力でのレーザー光学系を組み、反射光をセンサーでとらえて光電効果で出力を得て、さらにその位置場を取得すること、②既存の赤外線マウス光学系を応用して眼球の動きを検出すること、③赤外線を使用している視線解析装置からの視線情報からソフトウェアの改良で対応することのアプローチを行った。 すべて試したところ、③の原理を用いることが、精度、安全性、汎用性、コストの面で望ましいことがわかり制作した。結果、視線に連動して画像や映像を動かすことに成功した。静止画、動画にも対応させリアルタイムでの提示が可能となっている。北里大学医学部・病院倫理委員会の承認は得ており、患者への計測に向け、研究対象者を募っているが、応募者がおらず弱視治療の実例にまでつながっていないが、今後も臨床研究は継続していく。 本機器の精度評価においては、3Dプリンターで模擬眼を作成し、振動器をベースに置き、評価が可能になると思われたが、模擬眼で行う方法よりも外部カメラを用いて生体で行う方が望ましいことがわかり、視線挙動と映像の挙動がどの程度一致しているのか、どのくらいの遅延が起こっているのか検証を行った。さらに、将来的な実用も検討し、最終年度においてヴァーチャルリアリティシステムを用いて同機構を採用して開発を行い、完成した。結果、小型化と低コスト化も達成し、設定も比較的な容易なことから今後の発展も期待できる。
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