研究課題/領域番号 |
20K09807
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
羽室 淳爾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (80536095)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 網膜色素上皮細胞 / マクロファージ / 加齢黄斑変性症 / エキソソーム |
研究実績の概要 |
マクロファージ・網膜色素上皮細胞(MPs/RPE)共培養系において、前炎症性サイトカインIL-6, IL-8, MCP-1産生やVEGFが増強され、本作用の一部はMps産生TNFーaにより担われる。このTNFa産生は未変性RPEにより抑制され、RPEが酸化脂質に修飾さると本抑制効果は消失する。Mps/RPE → Exosome → Mps → TNFa→ RPE → MCP-1, IL-6, VEGFの炎症・血管新生増悪回路に係る細胞外微粒子包含分子、就中、miRNAの分子種とその機能の実態の解明を進め、核心をなす問として、①Mps/RPE 間の細胞干渉を介在する細胞外微粒子包含分子種は何か。②AMD治療薬として限界がありながらも用いられている抗VEGF抗体治療を代替できるような血管新生/Subretinal線維化の阻害作用にどう係るのか、③我々の見出したMps/RPE間の細胞間干渉をAMD病態に関与するとされる酸化ストレスがどの様に攪乱するか。この内、2020年度は①について研究を進めた。マウス系に引き続き、ヒトiPS由来RPEとPMAで分化させたヒトTHP1の共培養系についても.共培養でRPEからの産生が増強もしくは抑制されるAMD病態関連因子のプロファイリング:前炎症性サイトカイン、血管新生・補体活性化関連(増強・抑制)因子を終了し、これらの細胞間相互作用の一部は確かにエキソソームにより担われることを明確に検証した。共培養でRPEからの産生が増強される細胞外微粒子の包含する分子種(miRNA)を2種同定した。以上の成果としてマウス系については国際誌Exptl Eye Res. に原著論文として掲載された。また、日本眼科学会誌に内容紹介の依頼を受けて掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初はマウスの系でのみ勧める予定であったが、細胞間相互作用がエキソソームで一部担われていることが判明し、ヒトの系でも同様であるかの解析を進め、診断、医薬品開発への道筋を切り開く展開に進めた。結果、細胞接触を必要とする機能抑制細胞間相互作用【TNFa 産生抑制と血管新生抑制因子PEGFの産生抑制)とエキソゾームによる炎症増強作用に大別されることを見出した。後者による核酸医薬開発を目指し、包含されるmiRNA分子種の選定に成功した。眼科領域専門企業のご尽力で特許出願に至った。マウスについては報文化でpress out, ヒトに就いても報文が受理された段階である。 以上のように基礎医学としての進展とともに応用への可能性が見出されたことは大きい。
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今後の研究の推進方策 |
現在の予定のまま、2021年度中に、同定ヒトmiRNAsの機能、就中、RPEのミトコンドリア機能に及ぼす効果をmiRNAmimics, inhibitorの細胞導入で検証する予定である。同時に予定を変更して、同定分子種の網膜変性性疾患患者の体液中での存在を検定する準備を始めている。AMD、CSC、PCVの患者の血漿や前房水をあつめて同定miRが上昇しているか下がっているか。病態とどのような対応になるか検定する。このことによりAMDの早期診断・治療法の確立に繋げ,真似のできないAMDにおいて血管新生以前の段階での早期治療法の確立に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗に記入した通り、ヒトの系での実験に傾注したため、予定の実験が次年度に繰り越しになったため。2021年度はヒトの系で特定されたmiRNAのmimicsやINhibitorsなど核酸医薬候補物質の購入やそれらの機能、就中、ミトコンドリア機能の修飾作用の検定に使用予定である。また、ヒトiPS由来のRPE細胞の購入経費にも充当する。
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