研究課題/領域番号 |
20K09807
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
羽室 淳爾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (80536095)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 網膜色素上皮細胞 / マイクロRNA / ミトコンドリア機能 / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
黄斑の組織恒常性維持に不可欠な網膜色素上皮細胞(RPE)の機能変性を脈絡膜浸潤マクロファージ(Mps)とのネットワーク破綻として研究してきている。早期診断技術の開発と創薬を目指して、マウス系での成果 (大槻ら. Exp Eye Res ;205:108496 2021) に準拠し、ヒトMpsとヒトiPS細胞由来RPEの共培養系を構築した。RPEと脈絡膜浸潤Mps間の相互作用による病態増悪経路に細胞外微粒子(EVs)が関与することを明らかにし、miR494-3pが標的分子であることを発見した。 具体的には、重力方向の縦型トランスウエルに加え、EVsを通さない0.03μmのフィルターを装着した水平方向のダブルチェンバーを用いて共培養を行った。更に、粒子解析装置を駆使し、炎症性サイトカインMCP-1、IL-6と血管新生因子VEGFの産生増強にはRPEが産生するEVsの、血管新生抑制因子PEDFとTNF-αの産生抑制にはCognitiveな相互作用の関与を確認した。RPE由来EVsはMpsからのTNF-αの産生を増大させ、その刺激によりRPEからのEVsの分泌が更に増加した。Mpsの作用で分泌増強されるEVs内のmiRNAsの網羅的解析により、変性RPEよりミトコンドリア由来のmiR494-3pの分泌増加が見られた。以上全て世界初の知見である。本報以降の継続研究で、このmiR494-3pがミトコンドリア呼吸能の維持に不可欠であることを、miR494-3pのmimics, inhibitorという核酸医薬候補分子で検証し、それらがミトコンドリア内で増減することを単離ミトコンドリアで確認した。本EV包含miRNAsは、AMDの早期診断と治療の分子標的となると考えられる。その後も、RPE 細胞ならびに血管内皮細胞のミトコンドリア機能に及ぼす作用を多方面から検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように、3年での達成目標に到達し、網膜色素細胞を超えて、血管内皮細胞への効果検証にまで展開。論文も2報、学会での口頭発表も一報を実施した。本成果に基づきオーストラリアでの国際学会でセッシヨン統括者としてワークショップを組み立て。コロナで会期は2022年9月から2023年2月に延期。国際的にも高い評価。特許出願とPCT対応も終了。
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今後の研究の推進方策 |
① Mps/RPE 間の細胞干渉はマウス系に限局されるものか、ヒト病態にも関与するものかについてはヒト系でも関与のみられることを確認し、創薬、病態診断薬への道を拓いた。②Mps/RPE 間の細胞干渉を介在する因子は何かについてはexosome などの細胞外小胞体粒子(EV)に含まれるmiR494-3p, miR1246であることを明らかにし、核酸医薬への道を切り開いた。③AMDを早期に見出す手段として、AMD患者の末梢血でmiR494-3p, miR1246が増量することを予備的に確認し、診断薬への可能性を示唆しているが、どの程度早期のリスク患者でより明確な増加が認められるかは今後の課題である。診断薬以外では、核酸医薬で実績のあるロート製薬などと協議を進めて行きたい。我々は、臨床検体収集、研究開発展開方向での協力が限度となると思われる。低分子医薬開発にも有益な情報が得られつつあるが高い特許性を持つ独自の評価系の活用が重要で、この点でも、化合物ライブラリー(大学、企業、海外)の活用のためスクリーニング段階から製薬メーカーと提携を模索したい。 AMDの治療薬として限界がありながらも広汎に用いられている抗VEGF抗体治療を代替できるのか、血管新生阻害作用とどうかかわるのかは未知の課題であり、これらの諸課題の解決を通じAMD 病態への理解を深化し斬新な創薬標的として提案したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が予定より順調に進展した。miR494-3pが網膜色素上皮細胞のミトコンドリア機能に及ぼす効果について、Bioenergeticsを超えて細胞分化の視点からも進めるべく予定を変更。 2021年度は準備実験を実施し、2022年度に本実験を展開する。2021年度実施予定のHRPEの購入先が終売になり、新しい入手先を検討。 2022年度にトランスウエルを用いての細胞分化に伴う極性獲得を外部より購入のHRPEを用いて実施する。
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