研究実績の概要 |
令和4年度に引き続き本年度においても、我々が作製したTGFBI角膜ジストロフィモデルマウスである、TGFBI-R124C変異マウスを用い、clustered regularly interspaced short palindromic repeat (CRISPR) - CRISPR-associated 9 (CRISPR-Cas9)システムによる遺伝子編集について、その再現性について検討を行った。しかし動物飼育について、交配がうまくいかなくなったことから、胚保存より起こし、新たに実験用マウスの樹立を試みている。このようなCRISPR-Cas9システムはTGFBI角膜ジストロフィのみならず、他の遺伝性疾患にも有用であり、別の遺伝性角膜疾患である、フックス内皮角膜変性症においても、疾患モデルやCRISPRを用いたコンストラクトの検討と開発も行った。 TGFBI角膜ジストロフィは角膜混濁を来すことから視機能が低下するが、その混濁形成に関するメカニズムはほとんどわかっていない。そのメカニズムの解明は遺伝子治療確立のために重要である。そのためTGFBI角膜ジストロフィ患者の手術検体より採取した角膜実質細胞からのcell lineの樹立し、in vitroでの解析を試みた。現在R124H, L527R、A546Rなどいくつかの変異細胞のprimary cultureを作製している。またコントロールとしては実験用ヒト角膜(アメリカより輸入)から角膜実質細胞のprimary cultureを作製し、現在不死化に向けた準備を行なっている。さらに、実際のTGFBI角膜ジストロフィ患者において混濁がどのように視機能に影響しているか、についての臨床研究も試みた。TGFBI角膜ジストロフィ患者の各病型に対して前眼部光干渉断層計を用い、フーリエ解析を行ったところ、格子状角膜ジストロフィでは前後面の不整性が視力に影響し、一方顆粒状角膜ジストロフィでは散乱がより強く視力に影響していた。同じTGFBIジストロフィであっても混濁様式が変われば、視力に影響している因子が異なることが判明した。
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