加齢黄斑変性(age-related macular degeneration; AMD)は、50歳以上の1%以上が罹患する疾患であり、失明原因の国内第4位、米国第1位を占め、加齢(老化)とともに進行することから、現代の高齢化社会においては世界的な社会問題である。新生血管からの滲出性変化による滲出型AMDは、抗血管内皮増殖因子療法(抗Vascular endothelial growth factor療法;抗VEGF療法)で治療されるが、原因不明で進行する萎縮型AMDの治療法は現時点では世界的に無い。喫煙とメタボリックシンドロームが危険因子で、前駆病変は網膜局所の脂質沈着である。一方、脂質代謝異常は小胞体ストレスを引き起こし、二次的ミトコンドリア異常を引き起こしうるため、加齢により生じるミトコンドリア機能低下と相まってAMD発症の増悪因子となりうる。しかし、脂質代謝異常による網膜病変のメカニズムには不明の点が多い。そこで、高脂肪食メタボリックシンドロームモデルマウスを用いて網膜病変を解析し、小胞体ストレスが関連しうるか、および小胞体ストレスを標的として治療することでミトコンドリア異常・網膜変性・視機能低下が抑制されるかを解析した。既に、高脂肪食を継続的に摂取させたモデルマウスを作製し、メタボリックシンドロームを来していることを確認した。また、組織学的解析により、網膜色素上皮に脂質が沈着していることを示した。また、網膜電図により視機能が低下していることを明らかにした。その背景にミトコンドリア特徴的遺伝子発現の低下があることを突き止めた。今後、新規で世界初の萎縮型AMDに対する新規治療法の開発につなげる研究となった。
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