羊膜は創傷治癒促進効果や抗炎症作用があるだけでなく血管のない免疫寛容組織として欠損組織の代替えに移植されるなど、数多く臨床の場で使用されてきた。しかし、その効果や作用のメカニズムについて不明な点が多い。我々はこれまでに羊膜から分離した間葉系細胞を骨芽細胞や神経細胞へ分化誘導させることに成功し、その間葉系細胞の培養上清が角膜上皮の創傷治癒を促進することを報告してきた。これらのことから、間葉系細胞から放出される因子(セクレトーム)は角膜上皮の創傷治癒を促進することが推察される。本研究では、羊膜から分離した間葉系細胞を用いて、角膜上皮創傷治癒を促進するセクレトーム、特に再生医療でも注目されている細胞外小胞体(エクソソーム)を分離し、角膜上皮創傷治癒モデルならびにドライアイモデルを作成し、その効果とメカニズムを明らかにすることを目的としている。 本年度において羊膜から分離した間葉系細胞の培養上清から分離したEVsは直径156±5.9nmを多く含んだ球場の粒子であり、CD63、CD9やTSG101といったEVsの分子マーカーを発現していた。EVs添加により約1.8倍角膜上皮の重層化が促進され、K15、p63の未分化マーカーの発現も維持されていた。ウサギ角膜上皮の創傷治癒においても促進する傾向が示された。以上のことから、AMFs培養上清の角膜上皮創傷治癒促進効果は羊膜から分離した間葉系細胞から放出されたEVsが一部役割を担っている可能性が考えられた。
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