研究課題/領域番号 |
20K09815
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
山本 直樹 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00267957)
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研究分担者 |
平松 範子 藤田医科大学, 治験・臨床研究支援センター, 技術員 (10802209)
大熊 真人 藤田医科大学, 医学部, 講師 (50329710)
堀口 正之 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70209295) [辞退]
長井 紀章 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90411579)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 虹彩由来iPS細胞 / 三次元網膜再生 / 電気生理 / 薬物安全性評価 / 再生医療 / 網膜神経細胞 |
研究実績の概要 |
発生学的観点からin vivoにおいて多能性幹細胞から多様な細胞へ分化する過程では,細胞間の因子やシグナルが適切かつ必要な部位に作用する必要があるが,その機序は明らかではない。本研究では,ヒト虹彩由来iPS細胞から生理的機能を有する網膜神経細胞への分化において二次元培養の細胞間相互作用と三次元オルガノイド培養を中心とした網膜神経細胞の再生,およびそれらの細胞の移植時における拒絶反応に対する免疫抑制剤などの薬物送達と移植効率を検討する。 さらに,既に臨床で使用されている薬物の安全性や薬効評価について,iPS細胞から分化誘導後に不死化させた網膜前駆細胞および網膜神経細胞を用いた薬効評価を行う。 2020年度では,我々が初めて樹立することに成功したヒト虹彩由来iPS細胞の多分化能に関する検証実験を行い,さらにヒト虹彩由来iPS細胞を二次元培養系において,Recoverin陽性の網膜神経細胞,およびNeurofilament-MとBrn-3b陽性の網膜神経節細胞に分化誘導を行った。分化誘導した細胞について,電気生理学的機能の有無についてパッチクランプ法による検証を行い,Naチャネル(内向き電流)が検出された。TTXを添加することにより、Naチャネルは消失し、Wash outすることで再びNaチャネルが再検出されたことから、電気生理学的に機能する網膜神経細胞であることが確認された。 以上の結果より,ヒト虹彩由来iPS細胞を二次元培養系による分化誘導を行ったところ,電気生理学的な機能を有する網膜神経系細胞に分化できることがわかった。これらの結果をまとめて論文として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度では,ヒト虹彩由来iPS細胞の検証と二次元培養系による網膜神経系細胞への分化誘導についての成果をまとめることができた。 他方,分化誘導に用いているリコンビナント蛋白質のロット変更,新型コロナウイルスの感染拡大に伴う三次元培養系の実験で使用する細胞非接着の培養器材の輸入遅延,試薬・消耗品の物流停滞などにより、三次元培養系の研究進捗が大幅に遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本補助事業期間において,以下の研究課題を中心に今後も継続して研究を実施する。 ① 細胞間相互作用による改変SEAM法を用いた網膜前駆細胞の分離・細胞表面マーカー解析と三次元網膜組織の構築:改変SEAM法で分化した網膜前駆領域は,分化状態の異なるヘテロな細胞集団であると思われることから,この領域の細胞を用いてオルガノイドを形成させる検討を継続して行う。 ② ヒト虹彩iPS細胞から網膜前駆細胞に分化した際に発現が増加する遺伝子が検出できる細胞をレポーターアッセイ法にて作製し,ソーティングを行う。さらにオルガノイド培養法またはSFEBq法にて三次元網膜を形成させ,パッチクランプにて電気生理学的評価を行い,神経細胞の機能性を継続して検証する。 ③ 生体マウス網膜組織への移植と生着・シナプス形成評価:既に作製したマウス虹彩iPS細胞を①と同様に改変SEAM法で培養し,マウス網膜前駆細胞マーカーで分離する。この網膜前駆細胞を移植細胞として,マウスの網膜組織内での生着と分化によるレシピエント細胞との間でのシナプス形成を評価する。 ④ iPS作出細胞の違いによる網膜神経細胞への分化に関する影響,および不死化網膜前駆細胞の作製と網膜構成細胞への分化能の検証:iPS細胞を作出する際の由来細胞のメモリーやエピジェネティック,さらに不死化させた網膜前駆細胞などの分化効率について継続して検討する。 ④ 二次元/三次元培養法で作製した細胞を用いた薬物安全性・薬効評価:実臨床で用いられる薬物(色素なども含む)の安全性と薬効評価を行うハイスループットなin vitro細胞試験モデルの構築を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う三次元培養系の実験で使用する細胞非接着の培養器材の輸入遅延,試薬・消耗品の物流停滞などにより、三次元培養系の研究で使用する消耗品等が年度内に購入することができなかったため、残額が発生した。 令和3年5月10日現在で、国外からの輸入・物流の再開ができている試薬もあるが、未定の試薬もあるため、試薬の国内メーカーへの代替も含めて調査・検証していく。 試薬の準備ができ次第、実験を再開するため、2021年度中に2020年度の残額で行う予定の研究課題については、進捗できると予定・計画している。
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