研究課題/領域番号 |
20K09817
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松本 長太 近畿大学, 医学部, 教授 (70229558)
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研究分担者 |
野本 裕貴 近畿大学, 医学部, 講師 (50596806)
萱澤 朋泰 近畿大学, 医学部, 助教 (90550799) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 緑内障 / 視野異常 / タブレット / 多点刺激 / 自己チェック |
研究実績の概要 |
緑内障は我が国の社会的失明の第一位原因疾患であり、40歳以上における有病率は5%を超える。一旦障害された視野の回復は困難であり早期発見、早期治療が管理上の要となっている。しかし、緑内障性視野障害は自覚に乏しく、病期が重度になるまで気づかれないため潜在患者は約90%にものぼると推定されている。さらに緑内障と診断されても無自覚であるため、治療に対するアドヒアランスの問題が指摘されている。今回我々は、タブレット端末を用い自分の視野異常を簡便に自覚させる新しい視野自己チェックツールMVTの開発を目標とした。MVTでは多点刺激を導入し1-3個の測定点を同時に呈示し短時間に視野異常の検出が可能なプログラムを作成し、緑内障患者においてその有用性を検証した。48例の緑内障症例を対象に検討した結果、MVTでは感度93.9%,特異度95.6%, AUC0.9の良好な結果を得た。平均検査時間は109.4±24.8秒であった。多点刺激スクリーニングプログラムだけでは、患者自身は自分の視野異常を自覚できないため、引きつづいて4点同時刺激法にて自身の視野異常の自覚を促した。4つの視標を呈示する理由は人が同時に安定的に識別できる数が約4個までであること、4つであれば補填現象を回避でき明確に異常を自覚できること、各象限に同時に視標提示することで検査中の固視を維持できるためである。検査前に自分の視野異常を自覚していなかった症例は49%に上ったが、検査後は26.7%に減少した。4点刺激を行うことで被検者がどこが見えていないかを自身で自覚することが可能であることが確認された。一方、今後の課題として60歳以上の高齢者において、偽陽性応答が予想以上に増加する傾向が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
60歳以上の高齢者において、偽陽性応答が予想以上に増加する傾向が確認された。解析データからは呈示視標に対するタッチなどの応答特性には大きな差がないため、主原因は加齢による時間変調感度の低下に起因する可能性が示唆された。現在その原因をさらに精査解析し高齢者に対する適切な視標呈示条件の変更を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度で得られた検査結果を踏まえ、特に問題となっている加齢の影響を追加調査し、具体的な対策について検討する。2022年度で評価を進めてきた1)加齢に伴う反応時間の変化、2)画面の部位別タッチ誤差の分布、3)年齢による異常検出率の変化、4)年齢による検査の再現性の違い、について健常者、緑内障症例においてさらに解析を進める。さらに、加齢による感度低下に対応すべくソフトウエアの改良を進める。特に前年度の結果で明らかとなった高齢者に対する偽陽性応答の対策として、60歳以上の症例に対する時間変調刺激の最適なコントラスト感度を確定する。さらに、タブレットを用いた視野検査では、検査距離、固視などの条件が一般的な視野計より不安定になる可能性がある。タブレット環境においてもより安定した検査条件を維持することを目指し、タブレット内蔵カメラを用いた被検者の頭位や固視の自動補正機能の開発を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の研究にて、高齢者における偽陽性応答が多くなることが判明した。そのため、追加の測定プログラムを開発し、被検者の頭位、視線をコントロールする手法を検討する。それに伴い追加のプログラム開発費用を計上する予定である。
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