研究課題/領域番号 |
20K09818
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
近藤 寛之 産業医科大学, 医学部, 教授 (40268991)
|
研究分担者 |
和泉 弘人 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (50289576)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 黄斑低形成 / PAX6 / SLC38A8 / 転写活性 / ノックダウン |
研究実績の概要 |
黄斑低形成は先天的に黄斑の発達が障害された状態であり、重大な視機能障害を併発すると考えられてきた。近年の眼科画像診断の進歩により、その形態と機能の異常とが相関しない様々な原因疾患が存在することがわかってきた。我々はこのような症例の中に、PAX6遺伝子異常を有する症例があることを見出した。このような症例の臨床的な特徴を明らかにするとともに、これまで報告されていないPAX6遺伝子異常やその他の遺伝子の異常を解析し、黄斑形成の生理学機構の解明を試みることが本研究の目的である。令和3年度は、日本で初めてとなるSLC38A8遺伝子異常による常染色体劣性の黄斑低形成の臨床報告を行い、Documenta Ophthalmologica誌に報告した。本研究の主なテーマである、黄斑低形成の多様性について公表することができた。 また、PAX6遺伝子の転写活性に注目し、黄斑低形成に関する分子生物学的研究を継続した。PAX6遺伝子の転写活性が低下するものの、DNA結合能が保たれている変異(NM_001258462:p.N379K)を発見し、PAX6のC末端に存在するtranwsactivation domainの機能異常を示すことを明らかとし、第125回日本眼科学会で報告した(松下他)。さらに培養細胞(ARPE19および LUHMES)を用いてPAX6遺伝子をsiRNAでノックダウンさせ、発現が変動する遺伝子をマイクロアレイを用いて調べた。合計29種類の遺伝子が対照と比べて発現が増大もしくは低下した。これらの遺伝子を候補として、PAX6遺伝子変異が同定されなかった黄斑低形成症例にたいして、whoel exome sequenceによりバリアントをスクリーニングした。29種類に遺伝子にバリアントが見つからないかを調べたが有意なバリアントは見つからなかった。結果は令和4年の日本眼科学会で報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いた実験系の確立は順調であるが、症例のリクルートに時間を要しそうである。
|
今後の研究の推進方策 |
さらに適切な細胞を用いてPAX6遺伝子の発現変化による遺伝子制御の機構を把握する必要がある。調査対象となる症例を蓄積して実際の症例で遺伝子異常を同定し、黄斑低形成発症のメカニズムを洞察していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
該当症例に遺伝子解析を受託する予定であったが対象症例が少なく次年度に持ち越すこととなった。
|