研究課題
緑内障は視神経軸索が障害を受け、その細胞体である網膜神経節細胞(RGC)が死に至ることで、視野障害が起きる神経変性疾患である。近年ではRGC死よりも前に、軸索終末や樹状突起の退縮が起こり、神経回路が切断されることが発症原因とも考えられている。したがって、軸索と樹状突起を再生させ、神経回路を再構築すれば、一度低下した視機能が回復する可能性が推察される。本研究では視神経挫滅モデルを用いてTrkBシグナル増強による軸索および樹状突起の保護・再生のメカニズムを追求し、AAV2-CA-TrkBによる遺伝子治療の有効性を検討した。TrkBシグナル活性を厳密に制御する遺伝子ベクターを作製するため、SspBおよびiLIDを用いた。両分子は、470nmの青色光の刺激により光刺激により2量体を形成するため、SspB融合iTrkBおよびファルネシル化iLIDを発現した細胞は、光刺激によりiTrkBが膜局在型に変化してシグナルを活性化することが可能である。すでに培養細胞を用いた実験では、15minの光刺激によりERK活性が増大することを確認している。一方、ミトコンドリアを一過性にラベルするためのベクター作製も進めてきた。このベクターでは、ミトコンドリア局在化シグナルを付与したGFPをTetOnシステムの制御下で誘導発現する。すでに培養細胞を用いた実験から、Dox投与の3時間後にはGFPの誘導発現が確認された。また、活性型TrkB分子を活用した遺伝子治療による神経軸索再生の成果について、国際的な科学雑誌であるMolecular Therapy(2023年)に掲載された。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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