本研究では、ヒトの様々な網膜疾患における活性化カルパインの関与を明らかにし、カルパイン阻害薬SJP-0008の様々な網膜疾患への適応拡大を目指すために、活性化カルパインの生体内イメージングシステムを網膜疾患動物モデルを用いて確立することを目的としている。 令和3年度は、ラットのLPSによるぶどう膜炎モデルにて、カルパイン活性検出蛍光プローブ(改変プローブ)と共焦点走査型ダイオードレーザー検眼鏡(SLO)で少数のカルパイン活性網膜細胞が認められること、ラットでLPSによるぶどう膜炎誘導後の網膜を摘出し、qPCRでERストレス関連マーカーの発現上昇を認めた。 令和4年度は、眼炎症とカルパイン活性の関連性を評価するために、カルパインの活性化を抑制するカルパスタチンノックアウトマウスを導入し、障害刺激に対してカルパインの活性化が生じやすい環境下で検討を行った。カルパスタチンノックアウトマウスとそのワイルドタイプマウスにLPSでぶどう膜炎を誘導した後に、網膜を摘出しqPCRでRbpmsの発現を評価したところ、カルパスタチンノックアウトマウスにおいてRbpmsの発現が減少している傾向が認められた。そこで、カルパスタチンノックアウトマウスにLPSでぶどう膜炎を誘導した後に、網膜を摘出してRbpmsの免疫染色を行い、染色された網膜神経節細胞数を計測したところ、ぶどう膜炎を誘導しないコントロールと比較して網膜周辺部で網膜神経節細胞数が減少する傾向が認められるものの、有意差は認められなかった。また摘出網膜のTunel染色を行ったが、網膜神経節細胞のアポトーシスを検出することはできなかった。現在は、ぶどう膜炎モデルにおけるカルパインと網膜血管内皮細胞障害の関連性に着目し、評価を進めている。
|