研究実績の概要 |
令和4年度は、令和3年度に作製したMYO7Aに変異を有するヒトiPS細胞を網膜色素上皮(RPE)へ分化させた後に、細胞機能の評価やエクソンスキッピングの誘導とその影響の評価を試みた。先行研究では、スプライシングにおいて重要なスプライスドナーサイトやスプライスアクセプターサイトを標的としてエクソンスキッピングを誘導したが、この戦略では、Cas9のカットサイトがドナーサイトやアクセプターサイトにピンポイントで入ることがエクソンスキップの効率的な誘導に不可欠であったため、gRNAの設計に大きな制約があった。そこで、より制約を小さくするために、標的エクソンの前後のイントロンを標的とするgRNAを設計することにした。ヒトiPS変異細胞株をRPEへ分化誘導後、エレクトロポレーションによりgRNA, Cas9を発現するプラスミドを導入し、エクソンスキップの誘導をRT-PCRやRT-qPCRによって検証した。複数のgRNAを設計しスキップの誘導を試みたが、明確なスキップは認められなかった。また、MYO7Aの変異がRPEの貪食能に及ぼす影響を評価したが、野生型のRPEと比較し大きな差は見出されなかった。 先行研究で遺伝性網膜疾患の一つであるコロイデレミアの原因遺伝子であるCHMに対するエクソンスキッピングの効果を検証していたが、スキップによって誘導される短小化タンパク質の発現定量や貪食能に与える影響の定量的な評価、CHMの標的タンパク質であるRABタンパク質の局在の評価を行い、査読付き論文として発表した(Iwagawa T et al., J Gene Med. 2023)。
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