研究実績の概要 |
本研究は、わが国の難治性未診断眼疾患患者に対して遺伝子診断を行い、原因遺伝子を同定して新たな疾患概念を確立することを目的とする。 令和2年から4年に、1)CDK9は遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy, IRD)を伴うCHARGE症候群類似の新しい多発奇形症候群の原因遺伝子の可能性が高いこと、2)NEK1 遺伝子変異による、全身疾患を伴わないIRDが存在すること、3)片親性ダイソミーによって発症したSRD5A3関連先天性グリコシル化異常症とRP1関連網膜色素変性を報告した。 令和5年度には、レーバー先天盲(Leber congenital amaurosis, LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(Early onset severe retinal dystrophy, EOSRD)をWhole exome sequencing (WES)とWhole genome sequencing (WGS)によって解析した。病的バリアントを同定したRPGRIP1遺伝子関連網膜症7家系10例の検討によって、RPGRIP1遺伝子の日本人の高頻度変異が疑われる1339塩基の欠失を報告した。 本研究から、難治性未診断眼疾患患者の診断に次世代シークエンサーによる遺伝子解析は有効と考える。わが国でもIRDのパネル検査が保険収載されるが、難治性未診断IRDに対してはWESが有効であり、遺伝子の構造異常の場合はWGSによる解析が望ましい。まれではあるが、片親性ダイソミーのような複雑な遺伝子異常も含まれるので、特に小児期の遺伝性眼疾患の遺伝カウンセリングの場合は留意が必要と考える。
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