研究の目的:アルドステロンは眼圧非依存性に網膜神経節細胞死を引き起こすが、血圧との関係は不明である。今回高血圧モデルを作製することで、血圧との関係を検討した。 対象と方法:ラットに生理食塩水(生食)を飲水させることで、高血圧モデルを作製した。アルドステロンを浸透圧ポンプに入れ、皮下に埋め込み全身投与した。エプレノン(ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬)とヒドララジン(血管拡張薬)を用いて降圧薬の効果を調べた。アルドステロン投与6週後に網膜神経節細胞数(RGC)をカウントした。 結果:血圧は生食を飲水させることにより上昇したが、アルドステロン投与のみでは上昇しなかった。RGC(/mm2)はアルドステロン(-)/生食(-)、アルドステロン(-)/生食(+)、アルドステロン(+)/生食(-)、アルドステロン(+)/生食(+)でそれぞれ1981±109、2008±185、1581±56、1555±46であり、生食投与の有無に関わらず、アルドステロン投与で有意に減少した(P<0.001: ANOVA)。アルドステロン(+)/生食(+)にエプレノンあるいはヒドララジンを投与することで血圧の低下を認めたが、RGC(/mm2)はヒドララジン投与で1554±34、エプレノン投与で1868±177であった(P=0.01: t検定)。全てのモデルで眼圧の上昇は認めなかった。 結論:アルドステロンによる網膜神経節細胞死は血圧による影響を受けず、エプレノンの神経保護効果は降圧によらないことが示唆された。
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