研究課題/領域番号 |
20K09828
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石川 桂二郎 九州大学, 医学研究院, 助教 (00795304)
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研究分担者 |
松永 直哉 (門田直哉) 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (10432915)
武田 篤信 九州大学, 医学研究院, 講師 (40560313)
中尾 新太郎 九州大学, 医学研究院, 講師 (50583027)
村上 祐介 九州大学, 大学病院, 講師 (50634995)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 網膜 / 線維化 / 細胞移植 / 増殖硝子体網膜症 / リポソーム |
研究実績の概要 |
1:徐放化(リポソーム化)ROCK阻害剤の眼内線維増殖抑制効果、薬物動態:Dutchウサギ眼内に網膜色素上皮細胞懸濁液と成長因子を混和したものを硝子体内注射を行い、眼底検査を行い増殖硝子体網膜症(PVR)発症を確認。PVRに対して、BSS(コントロール)、リパスジル(Ripa; 2mM)、リポソーム化リパスジル(Lipo-Ripa; 2mM)を0.1ml硝子体注射を行った。その後、PVR進行を経時的に観察し、PVR stage分類を行った。また、眼球を異なる時間で摘出し、硝子体、網膜、網膜色素上皮に分離した。分離した各組織中のリパスジル濃度を、Mass-スペックメトリー(LC-MS/MS)で測定した。Ripa群では、コントロール群と比較して、注射後7、14日でPVR進行が有意に抑制された。Lipo-Ripa群ではコントロール群と比較して、注射後7、14、21、28日でPVR進行が有意に抑制された。Lipo-Ripa群の硝子体内リパスジル濃度は、Ripa群と比較して4-32倍高い値で推移した。 2:線維増殖予測、治療効果判定に有用なバイオマーカー分子の同定:ウサギPVR作成後、7日、14日で眼球摘出を行い、単離した硝子体液、網膜中のペリオスチン、TGF-beta2濃度を測定した。ペリオスチンは定量下限以下の濃度であったが、TGF-beta2濃度は正常の硝子体と比較して、高い結果であった。 3:網膜色素上皮移植モデルにおける薬剤投与後の移植後細胞の正着効果:ヒト培養網膜色素上皮細胞(RPE)をTranswell内で長期培養することで極性RPEを樹立した。極性RPEの一部を擦過し、RPE懸濁液をcultureすることで、擦過部位が再度極性化し、それに伴い一度低下した経上皮電気抵抗(TER)が再度上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1:徐放化(リポソーム化)ROCK阻害剤の眼内線維増殖抑制効果、薬物動態 少数例ではあるが抑制効果、徐放効果を確認することができた。 2:線維増殖予測、治療効果判定に有用なバイオマーカー分子の同定 ウサギ眼内の蛋白濃度測定というハードルがあったが、線維化マーカの濃度測定に成功した。 3:網膜色素上皮移植モデルにおける薬剤投与後の移植後細胞の正着効果 これまで報告がなかった移植モデルを、極性細胞を樹立した後に、擦過して再度培養するという方法で確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1:徐放化(リポソーム化)ROCK阻害剤の眼内線維増殖抑制効果、薬物動態 多数例で同様の検討を行い、現在得られている結果を確かなものにする。また、さらなる徐放化が必要な場合は、共同研究先と連携して、製剤に修飾を加えて効果、徐放性を高める工夫を行う。 2:線維増殖予測、治療効果判定に有用なバイオマーカー分子の同定 薬剤投与後の眼内液を採取して、着目している線維化マーカーの濃度測定を行い、治療効果の客観的評価の指標とする。 3:網膜色素上皮移植モデルにおける薬剤投与後の移植後細胞の正着効果 確立した、移植モデルを用いて薬剤投与の有無での細胞生着率や極性化を比較して細胞移植におけるリパスジルの効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス対策のため、実験などの研究が一時中断していた時期があったため、物品費が予定より少なくなった。現在は通常の研究体制であるため次年度の実験に用いる予定。
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