研究課題/領域番号 |
20K09830
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
目黒 明 横浜市立大学, 医学研究科, 特任准教授 (60508802)
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研究分担者 |
水木 信久 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (90336579)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベーチェット病 / サルコイドーシス / ゲノムワイド関連解析 / トランスクリプトーム解析 / マルチオミックス解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、ぶどう膜炎の主要な原因疾患であるベーチェット病(Behcet's disease:BD)およびサルコイドーシス(sarcoidosis:Sarc)を対象とする。ぶどう膜炎とは、眼内の虹彩、毛様体、脈絡膜およびそれらに隣接する組織に起きる炎症の総称であり、ぶどう膜炎により重度の視力障害を来す患者も少なくなく、ぶどう膜炎は本邦における失明原因の上位を占める。また、BDおよびSarcは眼以外の様々な臓器にも炎症症状を呈するため、これら疾患の罹患による医学的、社会的、経済的影響は大きく、いずれも厚生労働省に難病指定されており、BDおよびSarcの病因・病態を解明することは極めて重要である。BDとSarcの病因および病態の全容は明確ではないが、遺伝要因と環境要因が複合的に関与して惹起する免疫系の異常が発症要因になると考えられている。したがって本研究では、BDとSarcを対象に、「ゲノム解析」と「トランスクリプトーム解析」を統合したマルチオミックス解析を実行し、各々の疾患の遺伝要因および病態の解明を行う。 2020年度は、各々の疾患において、複数の人種集団のゲノムワイド関連解析(GWAS)データを対象にImputed GWASメタ解析を実行し、BDとSarcの疾患感受性候補SNPを網羅的に検出した。現在、網羅的に検出した疾患感受性候補SNPを対象に、新たな集団を用いてTaqManアッセイによる追認試験を実行し、BDおよびSarcの疾患感受性候補SNPの絞り込みを行っている。 また、2020年度の後半には、各々の疾患の患者の末梢血単核球から抽出したRNAサンプルを実験試料として、全RNAシーケンス(RNA-seq)によるトランスクリプトーム解析も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①BDおよびSarcを対象に、「ゲノム解析」と「トランスクリプトーム解析」を統合したマルチオミックス解析を実行し、各疾患の新規遺伝要因を網羅的に同定する。その後、同定した遺伝情報を基に、②遺伝要因(疾患感受性遺伝子)の機能解析を実行するとともに、③疾患の発症に関与するパスウェイ解析も行い、BDとSarcの発症機序および病態の全容を明らかにする。 現在までに、両疾患において複数の人種集団を対象としたImputed GWASメタ解析を完了し、各々の疾患と有意に相関を示す疾患感受性候補SNPを網羅的に検出している。また、これらの成果を対象に、新たな集団を用いた追認試験も開始している。さらに、各々の疾患を対象に、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析も開始している。 以上より、本研究は当初の研究計画のとおり、「おおむね順調に進展している。」といえる。今後引き続き研究を進めることで、当初の目標を達成できると考 えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に引き続き、Imputed GWASメタ解析で得られた成果の追認試験を行うとともに、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析も実行する。その後、「ゲノム解析」と「トランスクリプトーム解析」の結果を統合したマルチオミックス解析を行い、各疾患の発症リスク、重症度および臨床症状の形成に関与する候補遺伝子を「ゲノム」および「トランスクリプトーム」の両方面から総合的に評価し、新規の遺伝要因を網羅的に同定する。
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