研究課題/領域番号 |
20K09831
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
平本 菜央 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (10609093)
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研究分担者 |
向 敦史 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00419152)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性症 / 血管新生 / 管腔形成 / 網膜色素上皮細胞 |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(AMD)の現在主流の治療薬は抗VEGF剤である。新規エピジェネッティック制御物質「OBP801」は、網膜色素上皮細胞(RPE)において炎症、線維化、血管新生、瘢痕化に係る複数の遺伝子に対し包括的に抑制効果を示す。このOBP801を以て抗VEGF薬を超える新規AMD治療技術の開発を目指す。本年度の研究では、VEGF以外の血管新生因子の影響に対し検証を行った。血管形成促進因子として知られるPDGF-bb, b-FGF, EGFの添加により促進されるヒト臍静脈由来細胞(HUVEC)の管腔形成に対しOBP801の抑制効果を検証した。その結果、いずれの因子によって促進された管腔形成に対してもOBP801は抑制効果を示した。また、抗VEGF剤(アイリーア)との比較ではPDGF-bb, b-FGF, EGF添加誘導管腔形成に対してOBP801は抗VEGF剤よりも強い抑制効果を見せた。しかし、管腔形成が阻害されるのは、血清抜きの条件下であった。この条件下では管腔形成阻害効果は細胞毒性に拠るものである可能性がある。そこで毒性を示さない条件下で評価でき、かつ血管新生に係る、血管内皮系細胞の細胞増殖能および細胞遊走能の阻害効果を検証した。その結果、HUVEC並びにヒト冠状動脈内皮細胞においてもOBP801の遊走に対する阻害効果が確認できた。さらに、前述の血管形成促進因子を添加することで促進した細胞遊走に対しても本抑制効果は認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
OBP801が血管形成に対し阻害的に働くことが、細胞増殖や細胞遊走の検証から明らかとなった。また、HUVEC以外の細胞や、VEGF以外の血管形成促進因子に対しても阻害効果を示すことができた。しかしながら、VEGF 阻害薬に対する優位性や差別化を具体的示すことができずこの点では初期の目的には到達できていない。
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今後の研究の推進方策 |
①血管前駆細胞に対する直接的な抑制効果検証:他の血管形成促進因子ANGP2, ANGPL4, IL6, IL8, Clusterin, PlGF, MCP1, MMP9などに対する効果を管腔形成能、細胞増殖能、細胞遊走能について検証する。抗VEGF薬と比較する ②血管前駆細胞に対する間接的な抑制効果検証:AMD病態では、局所に浸潤するマクロフアージなどの炎症性細胞の産生するエキソソームやそこに含有されるmiRNAや酸化ストレスで変性したRPEが血管新生関連因子(管腔形成、内皮細胞増殖、内皮組織進展の促進、抑制因子)を産生しCNV形成と引き続いてのSubretinal Fiborosisを誘導していると考える。このような変性RPEが産生する血管新生関連因子を網羅的に解析し、AMD病態の中でも失明に直結するSubretinal Fibrosis誘導を制御する薬剤の選定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今期は、コロナの影響で納期の遅延や欠品が多数あった。その対処のため、消耗品の節約が必要となり、実験が遅れる原因となった。そのため、今年度に予定し実行できていなかった血管形成関連因子の影響検証等の実験を次年度に繰り越して行うことを予定している。 また、AMD病態に関与が示唆されているmiRNAや酸化ストレスの影響検証も次年度に行う予定である。
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