研究課題
網膜色素変性は加齢とともに徐々に網膜視細胞死による視野狭窄が進行し、最終的に視機能を喪失するため、高齢化社会においては社会問題となる。そこで本研究では、患者体細胞から樹立した人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPSC)を用いて網膜3次元オルガノイド培養を行い、網膜色素変性の病態を解析した。この方法では、患者の遺伝子変異を保持したiPSC由来の網膜細胞を、3次元構造により網膜の微小環境を模倣した状態で分化誘導することが可能であり、疾患病態の研究に適している。さらにiPSCの段階で遺伝子改変の技術を用い、網膜視細胞に分化した際に蛍光標識されるようにしておくことで網膜視細胞選択的解析を可能とするシステムを構築した。これを用いて網膜色素変性の病態を解析し、薬物効果のメカニズムを探ることで、遺伝子変異があっても網膜異常をきたさないための日本発で世界初の新規治療薬の開発につなげる研究である。今回は視細胞を蛍光標識した患者iPS細胞由来の網膜3次元オルガノイド培養を作製し、その病態を解明した。患者の持つ遺伝子変異が、視物質ロドプシンの遺伝子にあったことから、桿体視細胞に特異的転写因子であるNrl遺伝子のプロモーター支配下にGFP蛍光を発する標識を行った。3次元網膜オルガノイド培養の手法については、Eirakuらの方法を改変して研究室の本間がすでに立ち上げた方法(Homma et al. Genes Cells 2017)を利用した。免疫組織学的解析を行うと共に、フローサイトメトリーを用いて蛍光陽性細胞を取り出し、遺伝子発現等を解析した。
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Cells
巻: 11 ページ: 1497
10.3390/cells11091497
Life
巻: 12 ページ: 542
10.3390/life12040542