研究課題
強膜における小胞体ストレスの近視進行への関与とその機序を明らかにすることを目的研究を進め、以下のような新たな知見を見出した。① 強膜小胞体ストレスによって活性化するPERK経路およびATF6経路の両経路が近視進行に関わっており、その両経路の阻害により近視進行が抑制される。単独の阻害では他経路の代償的活性化によりむしろ近視進行が生じる。②近視進行の初期において強膜ではいくつかのコラーゲン遺伝子の発現が亢進しており、後期になるとそれらは認められず、コラーゲン1A1の発現低下が認められるようになる。これらの発現変化は強膜小胞体ストレスによって制御されており、強膜小胞体ストレスは強膜リモデリングを制御することで近視進行に関与していることを明らかにした。③ツニカマイシンなどの小胞体ストレス誘導剤の点眼投与による急性小胞体ストレスは近視を誘導する。すなわち、たった一度の小胞体ストレスの惹起がその後の眼軸伸長を決定する。また、その際、強膜コラーゲン線維の密集度が低下しており、これが強膜の変形しやすさに寄与している可能性を見出した。④ラクトフェリンは母乳や涙、また牛乳に含まれるタンパク質であるが、生体内においては鉄イオンの飽和度や消化によって生じる様々な長さの断片が存在し、それらの生理活性は状況によって異なることが知られている。消化ラクトフェリンまたは鉄飽和ラクトフェリンの投与は近視進行を抑制することを見出し、食事介入による効率的な近視進行抑制法の創出に繋がりえる発見である。
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