研究実績の概要 |
本研究は網膜の神経細胞における情報修飾の効果を調べるため、D-アミノ酸を指標に生理学的な研究を行っている。2022年度は 前年度までの網膜細胞外へのD-グルタミン灌流投与による測定とは異なるアプローチで、細胞内にD-アミノ酸を投与して蓄積による影響を検討する実験を試みた。この結果、細胞内にD-グルタミンが浸透すると電位依存性外向き電流の振幅が増加する傾向が見られた。細胞外投与とは異なる電流への影響になるが、いずれもD-グルタミンの蓄積による抑制的な効果が予想される。さらに、これら アカハライモリ網膜細胞でのD-アミノ酸による影響を、哺乳類であるマウス網膜細胞でも確認すべくパッチクランプ測定を試みた。しかし 網膜細胞のサイズ等の違いによる記録の難しさから、現在のところ再現実験が難航している。その他、本研究から派生して、網膜細胞での電位依存性イオン電流や活動電位の記録法をマウス虹彩由来iPS細胞から誘導した試料や培養バソプレシン細胞に適用し、神経分化や情報伝達物質による修飾効果などの成果を得ることができた(Iris-derived induced pluripotent stem cells that express GFP in all somatic cells of mice and differentiate into functional retinal neurons. Med Mol Morphol, 2022; Long-range axonal projections of transplanted mouse embryonic stem cell-derived hypothalamic neurons into adult mouse brain. PLoS One, 2022)。また、enzyme-linked fluorescent assay法によるグルタミン酸放出の測定で得られた、一部の性ホルモンによるグルタミン酸放出の変化についても引き続き解析を進めている。
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