研究課題/領域番号 |
20K09840
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
竹内 大 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 眼科学, 教授 (40260939)
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研究分担者 |
伊藤 正孝 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 再生発生学, 准教授 (30534896)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 網膜血管透過性 / オステオポンチン / 糖尿病 / ZO-1 / claudin-5 / 血液眼関門 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で我々は、増殖糖尿病網膜症(PDR)患者の硝子体液におけるhelper T (Th)17細胞関連サイトカイン、high-mobility group box-1 (HMGB1)およびオステオポンチン(OPN)の濃度が他の網膜疾患患者よりも有意に高いこと、および糖尿病(DM)を自然発症するAkitaマウスとTh17細胞優位の分化誘導がみられるIFN-γ欠損(GKO)マウスとを掛け合わせてAkita-GKOマウスを作成したところ、Akita-GKOマウスはAkitaマウスよりも早期に糖尿病網膜症(DR)所見を呈することを明らかにした.本研究では、1)長期的にAkita-GKOマウスのDR所見を観察し、PDR様変化がみられるか、2)高血糖下でTh17細胞およびOPN産生T細胞へと分化したHMGB1反応性T細胞がDMの発症、DRの進行に関与しているのか、そして3)抗IL-17A抗体、抗HMGB1抗体、および抗OPN抗体の硝子体内投与によりAkita-GKOマウスのDRの進行を抑制できるか否かについて検討する予定であったが、長期的にAkita-GKOマウスを観察すると、Th17細胞優位の分化誘導の個体差が大きいこと、また16週齢のAkita-GKOマウスは全身的にはTh17細胞優位の所見がみられる場合であっても眼内にPDR所見はみられないことが明らかになった.さらに多くのAkita-GKOマウスは24週齢までに死亡してしまうため、Akita-GKOマウスを実験マウスとして使用すること一旦中止し、DRモデルとして広く使用されているストレプトゾトシン誘発糖尿病マウス(STZマウス)を実験動物として用いることに変更することにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
12週齢のSTZマウスの網膜にみられるDR所見を観察したところ、病理組織切片にて網膜の菲薄化、およびアセルラーキャピラリーの増加が12週齢のAkita-GKOマウスと同程度にみられた。STZマウスの網膜におけるIL-17およびOPNの濃度を解析したところ、IL-17の濃度に有意差はみられなかったが、OPNの濃度は野生型マウス(Ctrlマウス)と比較して有意差をもって上昇していた.網膜におけるOPN mRNAの発現亢進もRT-PCRにて確認さたたため、OPNのDR病態への関与を調べるために、抗OPN抗体をSTZマウスの硝子体内に投与して、エバンスブルー色素により血管透過性を評価した.その結果、抗OPN抗体投与を受けたSTZマウス(抗OPN抗体+STZマウス)は抗体投与を受けていないSTZマウス(STZマウス)、isotype control IgGを受けたSTZマウス(Ctrl抗体+STZマウス)と比較して血管透過性亢進が抑制されていた.網膜血管における血管透過性は、網膜血管内皮細胞のtight-junctionにより制御され、tight-junctionを構成する分子としてZO-1およびclaudin-5が知られている.続いてCtrlマウス、STZマウス、Ctrl抗体+STZマウス、抗OPN抗体+STZマウスの網膜におけるZO-1 mRNAおよびclaudin-5 mRNAの発現をみたところ、STZマウス、Ctrl抗体+STZマウスではCtrlマウスと比較してZO-1 mRNA、claudin-5 mRNAの発現低下がみられたが、抗OPN抗体+STZマウスにおいてはCtrlマウスと同程度に回復していた.また同様の結果が、ZO-1およびclaudin-5に対する免疫組織染色によっても確認された.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、高血糖下では網膜におけるOPN産生が増加し、網膜血管内皮細胞におけるZO-1およびclaudin-5の発現を低下させることにより血管透過性を亢進していることが示された. 網膜血管の透過性亢進にはVEGFが深く関与し、抗VEGF抗体硝子体投与によるDRの血管透過性抑制効果は既に臨床応用され、糖尿病黄斑浮腫治療の第一選択となっている.そこで、OPNによる網膜血管透過性亢進がVEGFを介した作用であるか否かを調べるために、1)Ctrlマウス、STZマウス、Ctrl抗体+STZマウス、抗OPN抗体+STZマウスの網膜におけるVEGF mRNAの発現をRT-PCRにより解析する、2)上記4群の網膜におけるVEGFタンパクをBio-Plex Proにて測定する、3)in vitroでのヒト血管内皮細胞培養にて、高血糖有無の条件下でOPNを加え、transendothelial electrical resistance (TEER)法、エバンスブルー色素、およびZO-1およびclaudin-5に対する免疫組織染色にて評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
使用するマウスモデルをAkita x GKOマウスからSTZマウスに変更し、モデルとしての適正実験に時間を要したため。
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